ドラゴンクエストの小さなメダルについて


 小さなメダルはIVから導入されたシステムで、リメイク版のIIIでも採用されている。

 小さなメダルは、名前からして通貨的ではあるが、取引できるのはメダル王(かタイトル毎の類似キャラ)のみだ。

 そう考えると、小さなメダルは通貨ではなく、メダル王の依頼としての収集品の側面が強い。


 VIからV(リメイク版のVも)およびXは、アイテム一覧からメダルの枚数に応じて選択できる。

 メダル王は特殊な店主という立ち位置であり、メダルはかなり通貨よりの意味を持っている。


 VIからVIIIおよびリメイクのIIIとIVは、小さなメダルの枚数によって受けとるアイテムは選択できず、集めた枚数に応じてアイテムが与えられる。

 つまり、通貨による購入ではなく、収集枚数に応じた報酬と捉えられる。

 依頼の達成度を示すカウンタとして「小さなメダル」という単位が設定されている、という感じだ。


 IXの小さなメダルは、最初はアイテムが選べないが、ある一定数を超えるとアイテムが選択できるようになるという二面性を持っている。


 また、物々交換が可能なアイテムとしての側面があるが、小さなメダルは使用しても効果はなく、アイテム単体としての価値はない。

 店で売ろうとしても買い取り不可能か著しく安いので、ドラゴンクエストの世界の常識的にはガラクタの類いのようだ。


 ゲーム内での役割としては、別になくてもいいオマケ要素であり、所謂やりこみ要素の一種だ。

 これはまず、ゲーム進行が停滞した時にちょっと寄り道して、メダル探しをするという、ゲームプレイの硬直防止策として働く。

 そして、他のプレイヤーとの情報交換要素としての働き。

 ゲームクリアに必要ないので、少々理不尽な隠しかたをしてもいい。基本的に小さなメダルはなんのヒントもなく、怪しいっぽいところを調べると発見される。

 そういう発見しづらいものを見つけると嬉しいし自慢したい、見つけにくいものなので場所を知りたい、と情報交換を行う強い理由となる。


 これらの性質は、いかにも怪しそうなマップができてしまった時の対策として有効だ。

 プレイヤーが調べそうだけど、意味のあるアイテムを置くとシナリオに影響が出たり、深読みされてしまったりして置きづらい。

 バランスを崩すような良いアイテムをホイホイ置けない。

 安物ばかり置くと、むしろ邪魔になって探索のやる気を削ぐ事甚だしい。

 かと言って、怪しい所を調べたけど何もないということが続いても、プレイヤーが調べるコマンドを使わなくなってしまう。

 これでは、シナリオの進行が滞りかねない。

 そこで、小さなメダルを置く。

 実にいい解決策と言える。


 デメリットとしては、ゲームの目的が分散し、プレイ体験が散漫になりがちなところ位か。

 ゲームが大作であれば、多くのプレイヤーの嗜好に合わせる必要もあり、プレイ目的の多様性は豊かなプレイ体験に結びつく面が大きく、無難な策といえる。


 何と言っても、極端に性能の高いアイテムさえ与えなければ、見つからなくてもいいアイテムだけに、バランス調整は容易だ。

 制作コストが低い割に効果が高いナイスシステムと言えるだろう。

 ゲームの完成の最終段階に近い所で、ここ怪しそうなんだけど何もないんだよね、って所に配置するだけ! 素晴らしい。

 いや、まぁ、実際はもっとしっかり調整してると思いますが、他に比べると簡単だよね、って話で。