ゲームの中の不気味の谷
だいたい、人はひとに近いものに親しさを感じるようにできている。
枕よりぬいぐるみに親しさを感じ、四つ足の動物が二本足で立つと微笑ましく感じる、といったようなことだ。
しかし、さらに進んで作り物の人の表現がリアルになり、一見本物の人間と言える程の段階を越えたところで、驚く程の本物との隔絶感、あるいは嫌悪感を覚えることがある。
CGでなくても、蝋人形なんかで体験したこともあるかもしれないが、一見本物なだけにその本物との差がよりいっそう際立ち、「生きていないことがハッキリ知覚されてしまう」のだ。
見た目そのものにもあるが、特に動かないこと、あるいは動きが不自然なことで、その不気味さが鮮明になる。
これを、「不気味の谷現象」と呼ぶ。
ゲームにおける「不気味の谷」は、かなり早い段階でやってくる。
プレイヤーが操作するキャラクタは特に感情移入が強く人であるという意識も持ちやすい、それ故にさほどリアルでない画像である段階で、人ではないと分った時の不気味さが出てくる。
まだまだ箱に近かった「バーチャファイター」でも、倒れた後にリングから落ちるキャラクタに不気味さを覚えたものだ。
「バイオハザード」が怖かったのは、ゾンビが怖かったのではなく、あるいは主人公のもつ不気味の谷が怖かったのかもしれない。
現在、Xbox360やPS3はハイエンドグラフィックの方向へ行き、かなり多くの「不気味の谷」がそこには横たわっている。
Wiiはそこには行かず、Miiのような単純化されたグラフィックを選んだ。そちらの方が親しみやすいのだ。
Xbox360のゲームでも、「アイドルマスター」は親しみやすい方を取っている。狙ってやったのか、結果的にそうなったのかは、今後続編が出ればハッキリするだろう。
この「不気味の谷」は、ゲームのグラフィックというのはリアルになりゃ良いというものではない、という意見の根拠の一つだ。