「装甲騎兵ボトムズ」ATM-09-STスコープドッグ


 「装甲騎兵ボトムズ」1983は「機動戦士ガンダム」が開拓したリアルロボット路線を受けて制作された、タカラをスポンサーとする「太陽の牙ダグラム」に続くリアル戦場もののTVアニメシリーズである。

 スタッフも監督の高橋良輔、メカデザインの大河原邦男など、ダグラムと同様な布陣。


 アストラギウス銀河ではギルガメスとバララントの百年におよぶ戦争が終結しようとしていた。友軍の基地を襲撃するという不可解な作戦行動時、キリコはカプセルに入った美女と会う。

 恒星間戦争が終わった世界でキリコはATを駆り、パーフェクトソルジャーの秘密やギルガメス軍とバララント軍、そして「結社」に翻弄されながら、アストラギウス銀河全体に関わる大きな謎へと関わっていく。

 舞台やその時々のキリコの目的は大きく変わり、あらすじにするのが難しい話である。

ボトムズとは


 良くある勘違いとして、ボトムズの主役メカの名前が「ボトムズ」だというものがある。

 ボトムズとは「最低の奴ら」という意味で、ボトムズ世界のロボット「装甲騎兵(アーマードトルーパー以後AT)」に乗るパイロット達を指す。

 あるいはATの正式名称Vertical One-man Tank for Offence & Maneuver(V.O.T.O.M)の複数形である。

 一般に目にするボトムズの主役メカの名前はスコープドッグだ。主人公のキリコが一番「慣れている」ので良く乗るという以外の意味はない。

 ちなみに、AT操縦者をボトムズ乗りと言ったり、ボトムズという単語は単数形として使われることも多い。

 アーマードトルーパーという言葉は、本編ではほとんど使われない。


イメージできる大きさの乗用ロボット


 ATの全高4メートル前後というその大きさは、内部機構や動作含めて完全にイメージできる大きさといえる。

 コックピットに乗り込むことを考えても、つま先を足場に、膝の足掛けに乗り、腹部の手すりを掴みつつ腰のアーマーの足掛けを使って、コックピットに入るという一連の動作を想像できる。

 装備も、おおよそ人間の二倍の大きさなので、容易に想像できる。

 もう少し端的な言い方をすると「作れそうだ」ということだ。


参考:根性試しに作ってる。榊原機械 ランドウォーカー


 全高10mとなるともう歩くところがうまくイメージできないし、どうやって作っていいかも良く判らない。

 4m前後となると既に現実に形が作れ、動かすこともできるレベルなのだ。18mのガンダムとは、リアリティの度合いが段違いと言える。ギリギリ6m弱のパトレイバーが、理解可能な巨大さの上限かと思う。

 日本は大仏という巨大な人物像がわりとあちこちにあるヘンな国だが、それらは動くわけではないので建造物という範疇でしかイメージできない。

 超時空要塞マクロスバルキリーは航空機にリアリティを求めたのだが、そもそも航空機は一般人が想像できる範疇にはない。

 ATは誰もが目にする車両のリアリティを求めた、と言えるだろう。


ミッションディスク


 非常にメカニカルな印象の強いスコープドッグだが、コンピュータも搭載されており、音声認識による操作や、ミッションディスクと呼ばれるデータによる基本動作のカスタマイズが可能となっている。

 劇中でも、強敵であるパーフェクトソルジャーに対して、ミッションディスクをカスタマイズする描写(15話)が見られる。

 またミッションディスクのプログラムによって、自動操縦も可能である(11話)


量産の名機スコープドッグ


 スコープドッグゴルゴ13の愛銃がM16であるのと同様に、そのキャラを象徴するメカではあっても他のキャラも使う大量生産品の一つでしかない。

 ロボットアニメ的には、ザクを主役メカにしたというと分かりやすいかもしれない。デザイン的にもカーキグリーンの機体色や肩アーマーにザクからの流れを見ることができる。

 そして主役であるキリコは敵のATを奪って戦うことも多く、登場するATの大半の機種には乗っているかと思われる。

 逆にATに乗らない状態も多く、ほぼATが動かない回もかなりある。


 ATの装甲は人間の持つ拳銃やマシンガンでやられることはまずない(ということはやられることもある)が、ライフルだとちょっと危なく、携行ロケット弾だとかなり確実に破壊される。

 戦車を下回る装甲の薄さが特徴的で、装甲と言うより砂利やどろよけに近く、丸っきりスーパーロボット感はない。

 実際本編終了後に制作された外伝機甲猟兵メロウリンクでは、ATに対してライフルで対抗する兵士(機甲猟兵)が主人公である。

 要するに生身の人間でも対抗できなくもない、というレベルの兵器なのだ。


 ATは、駆動装置であるマッスルシリンダー内にポリマーリンゲル(PR)液が充填されている。

 PR液は駆動のための化学物質兼燃料および潤滑油という、オイルと燃料が兼ねられている2ストの混合燃料みたいな液体。

 そのためATは全身が燃料タンクと言え、ガソリン袋が歩いているようなものだ。

 それ故ATは「(自働火葬装置付き)鉄の棺桶」とも呼ばれ、撃たれると派手に爆発してしまう。

 長期戦闘用にPR液を供給するタンクをバックパックにする装備もあるが、これなどガソリン背中に背負って戦っているようなもんなので、超危ない。

 一度PR液が流出すると、転けた時に床に接触して火花が散った、みたいなちょっとした事でも爆発が起きて、アニメの絵的に非常に派手だ。


 酸素ボンベなどの生命維持装置はATではなく搭乗者のスーツにある。

 本編の描写を見る限り多くのATは自動車程度の気密性で、気密性が必要な場合は防護服や宇宙服を着る必要があると考えて良さそうだ。

 他にも、映像は計器類も含めコックピット内壁ではなくパイロットのゴーグルに投影されるなど、AT本体の機構は極力簡略化されている。

 このゴーグルのシステムは、今で言う拡張現実(AR)の手法であり、そのアイディアの先進性には唸らされる。

 これは作画的にも、コックピット内を描写する際に、外の景色を描く必要がないという省力化の効果がある。

 というかそれが主な設定理由かと思うが、ローラーダッシュと同様に、結果的には世界にリアリティを与えている。


ごちゃ混ぜの世界観


 世界観としてはマッドマックス2ブレードランナー地獄の黙示録ランボーアラビアのロレンススターウォーズエイリアン2001年宇宙の旅デューン 砂の惑星とにかく流行したSFと戦場映画をぶち込むだけぶち込んだというもの。


 しかし下手は真似て上手は盗むのだ、そう、ボトムズではそれらの要素は借り物ではなく、きちんとその世界のものとして成立させている。

 映画のアイディアにロボットを加えたらどうなるのか、という発想で作られたんじゃないかと思う。

 そのため、ボトムズではロボットがどのように運用されるかのバリエーションを大量に作ることとなった。


 その中でも特に出色なのが剣闘士のロボット版、バトリング(4話)の発明だ。

 バトリングに登場する個人(あるいはチーム)で所有するロボットは様々なカスタマイズが加えられ、プラモデルの改造やTV版以降の作品に豊かなバリエーションを生み出した。


デュアルモデル第二弾


 タカラ発行のデュアルマガジンでダグラムのエンディングをジオラマで再現するという企画があった。

 ダグラムのエンディングは朽ち果ててしゃがみ込んだダグラムという、非常に印象的な絵が使われていた。

 さて、そのとき問題となったのは、腰の装甲プレートだ。ダグラムの腰はガンダムを踏襲した箱形のもので可動範囲は狭く、とてもではないがエンディングのようにしゃがむことなどできなかった。

 そこで取られたのは、ある一定角度からのみ成立するそのポーズ専用の腰を作るということだ。不可能だと思われたダグラムのエンディングのジオラマ化、この企画は大きな反響を呼ぶことになる。

 ここで確認されたのは、受け手からは自由にポーズをとれるロボットが要求されていること、作り手がそれを供給できていないことだ。


 タカラはすぐにこの要求に応えることにした、すなわち自由なポーズが取れるデザインのロボットおよび、その玩具化だ。

 ボトムズではその答えとして腰の周りの装甲を分割し可動するようにしたのだ。単純に可動する部分が増えれば、玩具は作りにくくなるし壊れやすくもなる。

 そして当然開発と(アニメ作画も含め)制作のコストがかさむ。この可動装甲は、デザイナーよりもスポンサーであるタカラの大英断であったと言える。

 そして、ボトムズのエンディングでもしゃがんだロボットという絵は踏襲されており、もちろん腰の可動には矛盾がない!!

 地面に近くコックピットを持ってくる場合、通常スコープドッグは体育座りではなく逆方向の降着ポーズを取るので、あのエンディングはもう「ダグラムよりすごいでしょ!」と言いたいがための絵であると言える。

 分割された腰の装甲板は、瞬く間にアニメのロボットデザインのスタンダードとなった。


 ボトムズはタカラのデュアルモデルシリーズ第二弾としての役割を持っていた番組でもある。

 デュアルモデルとは、装甲を取り外しフレーム状態にすることができる玩具で、実にリアルかつ素晴らしいプロポーションは子供無視の「大人のための玩具」と言っても過言ではない。歴史に残る名玩具である。


 さて、本稿のスコープドッグのデュアルモデルだが、実際はコックピット再現はなされたものの装甲は取り外せない。

 単体の玩具としてのデキはともかく、デュアルモデルと言っていいのかどうかも微妙なものであった。

 ちなみに、装甲を完全にパージできるデュアルモデルはメダロットで復活した。

 しかし、ATのデザインはデュアルモデルを前提にして描かれたものであり、このタカラの要請なしには成立しなかったデザインであるのも確かだ。

 また装甲取り外しはできなかったものの、コックピットの再現や降着ポーズを含む可動範囲の大きさ、さらに豊富なオプション兵器の着脱が可能で、カスタマイズ魂を刺激するこれもまた名玩具と言えるものに仕上がっている。



ケレン味のある装備


 ATが単に地味なメカであれば人気は出なかったろう。

 しかし、ATには非常に強い「メカ的ケレン味」がある。


 ATの胴体はコックピットなのでがらんどうで強度的にかなり不安だ。特に、コックピットの横に付いている肩が脆すぎる(簡単にもげる)だろう。

 コレでは、「胸ががらんどう」とか言ってZガンダムを笑うわけにはいかない。

 だいたい、戦車と比べて装甲も薄ければ、車高も高いATの存在理由自体が、かなり薄いと言わざるをえない。

 だがいいのだ、論理的リアルよりも演出的リアルを取ったからこそATは格好良いし、リアルだと感じることができる。


アームパンチ


 内蔵のアームパンチは火薬によって拳をスライドさせて敵に打込む打撃武器。言ってしまえば飛ばないロケットパンチだ。パンチを打つと腕から薬莢が排出されるのが格好良い。

 これをさらに強化して杭状の金属を打ち出すパイルバンカー(これはスコープドッグの装備ではない)は「男の武器」として、ドリルではリアルさに難がある場合に使われるハッタリ兵器として絶大な人気を誇っている。


 ロボットの体の中で最も繊細である拳を打ち付けるアームパンチが、リアルなわけもない(ちなみに、拳ではなく掌底を打ち付けるシーンもある)

 拳で殴りつけると破損してしまうガサラキタクティカルアーマーメタルフェイクは、ちょっとリアルに寄り過ぎた面がある。


 ちなみに、ちょいちょいキリコはATの腕を担いで持ち運んでいる。ポリマーリンゲル液が抜けているとしても軽すぎる。

 だいたいスコープドッグの重量は6.6トンある。腕だけそこまで軽い理由がない。

 たぶん、あれはシナリオだかコンテだかは分からないが、制作のミスだろう。


ローラーダッシュ


 足の裏の車輪を回転させて滑るように移動するローラーダッシュは、同じく大河原邦男デザインであるヤッターワン(タイムボカンシリーズ ヤッターマン)と同様に作画枚数を減らすためというのが一番大きな採用理由だろう。

 しかしローラースケートのように走るロボットは、スピーディーな戦闘シーンを作り出すことに成功した。


 さらにターンピックという地面に打ち込む杭のアイディアが秀逸で、打ち込んだ杭を軸として超信地旋回並の小回りの高さと、それ以上の旋回スピードを両立させた。

 ターンピックを使って旋回しながら周囲の敵を掃射するという動きを見せ(3、11話)、旋回とアームパンチを組み合わせてよりパンチの威力を高めるという技も見せている(4話)し、旋回によって銃弾を回避する場面(14話)もみられる。

降着ポーズ


 また面白いのが、降着ポーズと呼ばれる、足(特に股関節)を人間では不可能な角度で折り畳むポーズだ。

 基本的には、乗り降りを楽にするための姿勢であリ、運搬・格納時の姿勢を低くする役割ももつ。

 人ではありえない方向に関節が曲がるのが、機械っぽさ丸だしで素晴らしい。

 たびたび行われる降下作戦では、着地のショック吸収するために降着ポーズが繰り返し使われ、迫り来る機械軍団の不気味さを一層高めている。

換装可能なバックパック


 背中のバックパックは交換可能で、宇宙用装備のラウンドムーバーやパラシュートザック、長期行軍用ミッションパックなど、シチュエーションによって換装される。

 パックパックはガンダムのランドセルから進化し、着脱可能になったダグラムのターボザックのアイディアを、より汎用化させたもので、後年ではレイズナーでも換装可能なパックパック採用されているが、ATほどは活用されていない。

豊富なオプション


 その他、手持ち武器のバリエーションも多く、腰にもフロートやミサイルを装着できるラッチがあり、降着状態で装着するドッグキャリアーも局地用にバリエーションがある。

 前述のバックパックと合わせ、組み合わせは無限大だ。


 そして武器のハリネズミといった印象のレッドショルダーカスタムの重装備を再現できるタカラデュアルモデル。

 リアルとかどうとかを別にしても、純粋に玩具として面白いのである。

飛び回るAT


 宇宙でのATは、バックパックにラウンドムーバーを装備する。

 これはガンダムに登場するノーマルスーツの宇宙機動用装備のロボットへの応用である。

 ATを宇宙でまで使うのは汎用性が高すぎるかとも思えるが、この装備は小惑星、あるいは宇宙船へと乗り込むためだけの装備と考えられる。

 前述の通り、生命維持装置はパイロットスーツ側にあるので、AT側の真空・無重力対応は最小限で事足りている。


 ただこのラウンドムーバーは相当高出力で、サンサ星の重力が軽いのかもしれないがATが空を飛ぶシーンもあり(32話)空中戦までこなしている。

 ガンダムよりよほど飛んでるのだが、ほとんど印象としては残っていない。

 また、クメン編ではヘリにぶら下がって輸送されるシーンも頻繁に見られる。これはダグラムからのアイディア転用だ。

 他にも、クメン編後半ではフラインクプラットホームに乗って斜面を飛んでくるATを多く見ることができる。

 その他、飛ぶと言っていいのか微妙だが、AT用のホバークラフトも存在する。


 しかし、ファンの間でも「ATは飛ばないもの」という共通認識ができていると言ってよい。

 あくまでもATは車両の延長である、ということだろう。

 びゅんびゅんモビルスーツが飛び回るようになったガンダムの続編に比べ、ボトムズのATは逆にどんどん飛ばなくなっている。

ATのその後


 小説ベルゼルガ物語で描かれた藤田一己デザインのテスタロッサは、丸っきり世界観を無視したと言っても過言ではないほどの思い切ったデザインのATであったが、まちがいなく格好よかった。

 その細身のシルエットのATというアイディアは、コードギアスナイトメアフレームで結実する。

 ただ、ATはボトムズ世界内では完成されたマシンのようで、その後に作られた30年後の世界でもスコープドッグは現役であり、他のATのシルエットもそれほど大きな変化はない。



ロボットの演出としてのボトムズ

乗用ロボットで物語を作る際に問題となるのが、搭乗者とロボットを一画面に納める事の困難さがある。

搭乗者が見えなくなるからといって、リアルロボットの顔やポーズに表情を付けるわけにもいかない。

この問題を、ATのサイズが小さめである事もあり、ボトムズではかなり解決されている。

ターレットスコープ


 スコープドックの名前の由来ともなっている、ターレット式三連カメラ(ターレットスコープ、ターレットレンズ)が無機質なロボットに表情を与えている。

 これは機動戦士ガンダムジオン軍モビルスーツに使われたモノアイの進化系だ。

 このカメラの移動やズーム、回転してレンズを入れ替える動作は、印象的なオープニングでも勿論、本編でも様々な演出に効果的に使われている。

バイザー


 頭部のカメラが付いたバイザーを開けると操縦者の顔が覗く。

 演出上はメカ→キャラの展開を容易にする発明であり、このバイザーは簡単に破壊されたり開いたりして搭乗者が露出する。

 バイザーを開けたまま肉眼により戦闘を行うこともできる。

 これは後にパトレイバーなどにも取り入れられたギミックであり、前述のヤッターワンにコックピットがなく、取っ手に捕まって走るのと同じ作劇上の要請から作られたギミックであろう。

 そしてコックピットむき出しのライドバックがもっとも先鋭的にこのギミックを押し進めたものといえるかもしれない。

 とにかく巨大ロボットはキャラクタを描くのが難しいが、ボトムズはATの全高4mというサイズとバイザーによって。キャラクタ心理を上手く演出することに成功した。

ハッチ


 また、スコープドッグは窓であるバイザーを開ける場合と、扉であるコックピットハッチを開けることによる緊張感の使い分けという演出を行なっている。

 体全体をさらけ出すハッチオープンは、戦闘が終わって仲間と談笑するシーンでは開放感を、敵(主にイプシロン)に向けてハッチをオープンするキリコは逆に弱点をさらけ出した緊張感を見事に演出している。


 さらに面白いのは、パイロットのヘルメットのゴーグルを取ることにより顔が見える、あるいは隠れて見えないということが見事に演出に生かされている。

 この三段式の見え隠れ演出が、ドラマに深みを与えている。同じことを巨大ロボットでやるのはかなり難しい。

 例えばガンダムがグフのコックピットを切り、グフのヒートサーベルでガンダムのコックピットが切られて互いにパイロットが露出するが、そんな特殊な状況は作品全体で何度も出せるものでない。

 巨大ロボのコックピットがむき出しになりパイロットが外に出るというのは、無茶なシーンだからこそ印象に残るが、それだけに決めのシーンでしか使えないというジレンマも持つ。


まとめ


 スコープドッグは、戦闘用の乗用ロボットに関してのリアリティを追求し、関節の可動や武装のようなハードウェア、およびミッションディスクやARゴーグルなのソフトウェア、さらに運用面や世界での許容のされかたも含めて、非常に先進的なアイディアを持った名機である。

 登場から30年経った今でもボトムズが「最もリアルなロボットアニメ」と言われていることからも、その先進性が分かるだろう。

 しかしそれだけ長く愛され、今後も愛されるであろう理由は、リアルだけではなく理屈抜きに格好良い仕掛けがふんだんに組み込まれていたことにあった、と言える。

ドラゴンクエストの小さなメダルについて


 小さなメダルはIVから導入されたシステムで、リメイク版のIIIでも採用されている。

 小さなメダルは、名前からして通貨的ではあるが、取引できるのはメダル王(かタイトル毎の類似キャラ)のみだ。

 そう考えると、小さなメダルは通貨ではなく、メダル王の依頼としての収集品の側面が強い。


 VIからV(リメイク版のVも)およびXは、アイテム一覧からメダルの枚数に応じて選択できる。

 メダル王は特殊な店主という立ち位置であり、メダルはかなり通貨よりの意味を持っている。


 VIからVIIIおよびリメイクのIIIとIVは、小さなメダルの枚数によって受けとるアイテムは選択できず、集めた枚数に応じてアイテムが与えられる。

 つまり、通貨による購入ではなく、収集枚数に応じた報酬と捉えられる。

 依頼の達成度を示すカウンタとして「小さなメダル」という単位が設定されている、という感じだ。


 IXの小さなメダルは、最初はアイテムが選べないが、ある一定数を超えるとアイテムが選択できるようになるという二面性を持っている。


 また、物々交換が可能なアイテムとしての側面があるが、小さなメダルは使用しても効果はなく、アイテム単体としての価値はない。

 店で売ろうとしても買い取り不可能か著しく安いので、ドラゴンクエストの世界の常識的にはガラクタの類いのようだ。


 ゲーム内での役割としては、別になくてもいいオマケ要素であり、所謂やりこみ要素の一種だ。

 これはまず、ゲーム進行が停滞した時にちょっと寄り道して、メダル探しをするという、ゲームプレイの硬直防止策として働く。

 そして、他のプレイヤーとの情報交換要素としての働き。

 ゲームクリアに必要ないので、少々理不尽な隠しかたをしてもいい。基本的に小さなメダルはなんのヒントもなく、怪しいっぽいところを調べると発見される。

 そういう発見しづらいものを見つけると嬉しいし自慢したい、見つけにくいものなので場所を知りたい、と情報交換を行う強い理由となる。


 これらの性質は、いかにも怪しそうなマップができてしまった時の対策として有効だ。

 プレイヤーが調べそうだけど、意味のあるアイテムを置くとシナリオに影響が出たり、深読みされてしまったりして置きづらい。

 バランスを崩すような良いアイテムをホイホイ置けない。

 安物ばかり置くと、むしろ邪魔になって探索のやる気を削ぐ事甚だしい。

 かと言って、怪しい所を調べたけど何もないということが続いても、プレイヤーが調べるコマンドを使わなくなってしまう。

 これでは、シナリオの進行が滞りかねない。

 そこで、小さなメダルを置く。

 実にいい解決策と言える。


 デメリットとしては、ゲームの目的が分散し、プレイ体験が散漫になりがちなところ位か。

 ゲームが大作であれば、多くのプレイヤーの嗜好に合わせる必要もあり、プレイ目的の多様性は豊かなプレイ体験に結びつく面が大きく、無難な策といえる。


 何と言っても、極端に性能の高いアイテムさえ与えなければ、見つからなくてもいいアイテムだけに、バランス調整は容易だ。

 制作コストが低い割に効果が高いナイスシステムと言えるだろう。

 ゲームの完成の最終段階に近い所で、ここ怪しそうなんだけど何もないんだよね、って所に配置するだけ! 素晴らしい。

 いや、まぁ、実際はもっとしっかり調整してると思いますが、他に比べると簡単だよね、って話で。

奈落はいつから?


 画面外まで落ちるとミスとなる「奈落」を最初に使ったのはブローダーバンド カラテカだったかと思う、この時は「飛び越す」ための穴ではなく、「そちらにはいけない」という記号に近い役割だった。

 トゲなどのマップチップでミスすると明示されている場合と違い、「奈落」は理不尽な下手すればクソゲー化しかねない仕掛け、というかこのせいでカラテカは日本ではクソゲー呼ばわりされる。

 動く足場の下など、落ちたらミスが納得できる場所にあるパックランドを経て、スーパーマリオブラザーズ以後は、お約束として定着した。

 ただし、お約束を知らないプレイヤーにとっては、ミスとなるのか下に移動するのか分からない、理不尽な仕掛けであることは間違いない。


 ちなみにアクティビジョン ピットフォールはその名通り穴がありジャンプできないと落ちるが、下の段に移動してミスとはならない。

 落ちるとミスとなる沼はあるものの、処理上は触れるとミスとなるトゲと同じような扱いで分かりやすい。

「魔法の天使クリィミーマミ」森沢優,クリィミー



魔法の天使クリィミーマミ」は「魔法のプリンセスミンキーモモ」の人気を受けて、1981年開始で1983年当時も放送継続中の「うる星やつら」で一世を風靡していたスタジオぴえろに制作会社を変更して再スタートしたもの。

 なので「ぴえろ魔法少女シリーズ」と言うとミンキーモモは含まれない。

 ただしぴえろが制作していても「シュガシュガルーン」はぴえろ魔法少女に入れてもらえない…制作時期が飛んでるからかというのもあるが、主人公がそもそも魔女というのがぴえろ魔法少女シリーズの文法ではないというのもあるだろう。

 魔法少女という呼び方は放送当時はなくて、魔女っ子と呼ばれていたが、実際は魔女(魔法を使う一族)ではなく魔法を使う少女であることによる違和感から、総称が「魔法少女」というところに落ち着いたのかと思う。


 「うる星やつら」の高田明美がキャラクタデザイン担当し、原作付きでないオリジナルキャラで実力を発揮したのが本作となる。

 また高田明美パステルで描くフンワリとしたイメージイラストは、しっかりとした線と塗りで描かれた従来のアニメイラストと一線を画すオシャレな印象を与えた。


参考:「うる星やつら」ラムについての考察


 物語は「未知との遭遇」1977を思わせるスペクタクルシーンで幕を開け、フェザースターの船から1年限定で魔法を授かり、お目付役的に猫っぽい生き物ネガとポジがついてくる。

 当初は半年の予定だったが人気が出たため放送期間が1年に延長され、放映終了時と魔法がなくなる日付がシンクロして、リアルタイム性の高い内容となった。


 本作は魔女っ子ものの新スタンダードを確立し、女児向けアニメにクリィーミーマミ以前・以後と分けられるほどの影響を与えた。

 ちなみに、「魔法少女まどか☆マギカ」で黄色の先輩魔法少女の名前にマミって付けてるのは、どー考えてもクリィミーマミへのオマージュだと思うんだが。

 なおクリィミーマミが「エスパー魔美」のオマージュかどうかは微妙。


アイドルものとして


 アニメでアイドルものというと「さすらいの太陽」1971が嚆矢だが、スポ根ものの芸能界版という趣だった。

 その後、「ピンク・レディー物語 栄光の天使たち」1978という実録ものが制作されたりもしたが、もう一つ定着するには至らなかった。

 そしてクリィミーマミの前年の「超時空要塞マクロス」1982がロボットものの中にアイドルものを取り込み、クリィミーマミ放映直前まで放映していた。

 当時としてクリィミーマミは「マクロスミンキーモモが合体したアニメ」という感覚である。


 新人を声優と歌手として起用するのはマクロスと同様の手法で、正直下手なのだが、だんだん下手なのではなく優とマミはああいう喋りかたをするキャラなんだ、と思えてくる。

 ほとんどこれだけしかアニメ出演作はないので、主役の太田貴子はもしかしたら上手かったんじゃないか、とか思っちゃう位だ。


 なお、本作では同じ事務所の綾瀬めぐみ以外の芸能人がほとんど登場せず、そもそもマミに芸能界でトップに立とうとかいう意思も全くなく、本作での芸能界はこじんまりした印象となっている。

 逆に事務所やテレビ局の裏方などは丹念に描かれ、魔法ものに関わらず妙なリアリティを醸し出している。


現実のアイドルとアニメのアイドル


 その後「アイドル伝説えり子」1989のように、実在のアイドルを主役に据えるアニメは作られるが、アニメ的にもアイドル的にも大ヒットはない。

 近年で実写アイドル「しゅごキャラエッグ!」と融合を図ろうとした「しゅごキャラパーティー!」2009は見事に滑って、好評だったシリーズをグダグダにして閉じることとなってしまった。

 そもそも「しゅごキャラ」自体はアイドルキャラは出るものの、アイドルものではないが。

 本作の太田貴子もそうだが、アニメがヒットしてしまうとアニメの印象から抜け出すのがまず無理だったりするのもリスクだ。


 結局、アニメのアイドルとしても実在のアイドルを売り出すという手法は、さほど旨味がないようだ。

 アニメに絡めたアイドルの売り出しかたにしても、声優するとか、OPやEDの歌を担当するとか、普通に芸能活動するのが間違いない、という所で落ち着いている。

 例外的に「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」2009が、教育番組ということもあって、アイドルとして売り出そうという色気が見えなかったことが功を奏したか、実写パート+アニメの番組として成功した。

 また、アニメキャラとして売り出しはしないが、アニメ的コスチュームと色で覚えてもらうという戦略が成功した「ももいろクローバーZ」が2013年現在、一世を風靡している。


AKB0048」2012は、実在のアイドルAKB48をベースとしたアニメにも関わらず、作品内容は完全にSF作品となっていたりするのが象徴的だ。

 これならネームバリューや楽曲を活用しつつも、現実との整合性はほとんど取る必要がない。

バーチャルアイドルの定着


 1980〜1990年代も漫画原作を中心としてアイドルものアニメは作られ続けるが、なかなかムーブメントは起きなかった。

 2000年代を迎え、ゲームの「オシャレ魔女♥ラブandベリー」2004や「THE IDOLM@STER」2005を経て、アイドルアニメは現実のアイドルとは別のものとして復権する。

 具体的には、店舗に設置されるゲーム発信でアニメ化するというメディアミックス展開の「リルぷりっ」2010、「THE IDOLM@STER(アニメ)」2011、「プリティーリズム」2011や「アイカツ! -アイドルカツドウ!-」2012など(表記は全てアニメ化年)がある。

 このようにゲームからはじめるアイドルものの定石ができていると言っていいだろう。


 アイドルが主題でない「プリキュア」シリーズでも、ちょくちょく登場人物中にアイドルやモデルのキャラが登場するし、前述の「マクロス」の新作なども継続して作られ、多くのアニメの中でアイドルは地位を保っている。

 また、アイドルとして作られた訳ではないが、「初音ミク」2007も事実上のアイドルとして、アマチュアによるミュージッククリップアニメに最も登場するキャラクタとして2013年現在も君臨している。


参考:初音ミクについての考察


 そんな流れの中、本作「クリィミーマミ」も30周年を迎え、バーチャルアイドルとして再展開が始まろうとしている。

 また、NHKの連続ドラマ「あまちゃん」2013で、「クリィミーマミ」時代のアイドルが現代のアイドルの母親世代として登場することでリバイバルブームを引き起こしている。

 30年以上の厚みをもった「クリィミーマミ」は、古くて新しいアイドルとして、今後の動きが注目される。

魔法ものとして


 シリーズを通して、魔法はほとんど優がマミに変身するためにしか使われていない。

 要するに、ミンキーモモが魔法で大人のプロフェッショナル(職業婦人)に変身することの限定版だ。

 物語としては同じ職業に変身する事で、舞台や登場人物が限定され、物語としては深みが出た。

 各話の面白みも、芸能界、恋愛、ファンタジックな登場人物や現象など、主人公の魔法以外の部分で作られている。


 クリィミーマミはそれまでの魔女っ子ものの要素を踏襲していて、この時点でもはや様式化している。

 変身アイテムとして魔法のコンパクトとそこから飛び出すクリィミーステッキ、更には変身呪文「パンプルピンプルパムポップンピンプルパンプルパムポップン」、お供の小動物(前述のネガとポジ)といった具合である。

 そのこともあって、それぞれの要素の重要度も魔法そのもの同様に軽い。

 の割に変身がバンクではなく、全く使い回しがない訳ではないが、毎回違う演出で変身するのが面白い。


 主人公である優は、思いを寄せている俊夫が変身後の姿であるマミに夢中になってしまうこともあって、当初から魔法を邪魔者っぽく思っていたが、最終的にも魔法はいらないと結論づけている。

 また、マミへの変身以外は何ができるのか具体性に乏しく、ピンチになった時に魔法でどうにかなるのかならないのか全然予想がつかない。

 番組中盤でパワーアップが図られ、ルミナスターというタンバリン状の変身アイテムが追加され、物体に魔法をかけられるようになった、というがそもそも今まではどういう制限があったのかよく分からない。

 更に、魔法がコンパクトのディスプレイ部分に表示されるが、ネガとポジを含め、誰も読めないので新たな魔法が使えないときている。

 とまぁ、そんな感じで魔法ものとしては、かなり魔法の扱いがぞんざいである。


 しかしながら、本来人間は全てフェザースターの記憶を持っており、主人公の優のようにフェザースターの船を見ることができる子供もいるとか、周辺設定はかなりしっかり作られている。

 つまり、魔法を使う主人公をフィーチャーしているのではなく、実は世の中には気付かないだけで魔法が溢れているのだ、ということが主題となっているのだ。

 特に32話のバレンタインのエピソードは、この世界観が分かりやすく表現されている。


話の幅の広さ


 1話ではローラースティックという「ローラースケートを引っ張っる芝刈り機」みたいなガジェットが登場して、前述のSF的演出とともに、SF系の番組かと思わせる。

 しかし話は、妖精や妖怪が出たり幽霊からはたまた怪獣まで登場し、ファンタジックな雰囲気に彩られる。

 と思いきや、業界の確執やら収録の時間合わせやら、なんだか世知辛い話も多く割り込む。

 さらに少女漫画的恋愛要素どっぷりになって、そういう話かと油断していたら、タイムスリップものとか挟んでくる。

 という何でもアリな作りであり、これくらい振れ幅のある作品もなかなかない。

 魔法少女というお題を使って、やりたい要素を全部ぶち込んだという様相だ。


「変身後の自分が恋のライバル」というのは、男性ヒーローでも良くみられるパターン


キャラクタデザイン

髪型


 マミは今見ても凄いアホ毛だ。当時アホ毛ではなくアンテナとか触角とか呼ばれてたように思うが、それにしても常軌を逸した出っ張りっぷりである。

 これだけのアホ毛を備えていながら、ほとんど感情表現としては使われていない。

 また、ふんわりと広がった髪の毛は立体としてどうなっているんだかよく分からない不思議な髪だ。

 ミンキーモモをアレンジしてフンワリ感や立体感を付けようと試行錯誤した結果かと思われるが、作中でも描き方は安定せず、結局なんだかよく分からない不思議な髪型となっている。

 なお、マミの髪型はポニーテールにしたり、ウェーブを付けたり、ちょこちょこ変わっている。


 優の髪はおかっぱショートカットで、特徴的なのはクラゲを被ったような独特のハイライトだ。

 この作品中でも他のキャラでは使われていないのがまた独特である。

八重歯


 パロディ作品では、アホな顔をしたマミや優は大抵八重歯(もしくは欠けた歯)がつきものだったように思う。

 とにかくパロディものだと判で押したように八重歯がついていた記憶がある。


 しかし本編では基本的には八重歯はなく、ギャグシーンでもそう多くは出てなかった。

 記憶補正とは恐ろしいもので、後づけのパロディのせいで、マミや優には八重歯がついてないといけないような気になる。

 多くの(男性)アニメファンは同じ印象を持っていると思うが、どうだろうか(投げっぱなし)

衣装


 当時は漫画原作のアニメ「CAT'S EYE キャッツ・アイ」1983も放映されており、レオタードが最新の「お色気」ファッションだった。

 映画「フラッシュダンス」1983が流行ったこともあり、アニメに限らず、実写ドラマでもやたらレオタードが出ていたような印象がある。

 そのあたりを踏襲してマミもレオタードにフリルをあしらい、首には同じくフリル付きのチョーカーといった、エロカワイイ(当時この言い回しはない)衣装となっている。

 今見ると、少々シンプルすぎる気もするが。

 流石にアイドルだけあって、このスタンダードな衣装以外にもかなりのバリエーションがある。

 個人的にはホルターネックのピンクの衣装が好き、と同時に頭の星がゆらゆらするカチューシャ(ルミナウォーク)はダサイと思ったものだ。


 対して変身前の優は、1年を通してほぼ同じ服で通している。

 当時流行していたというか、流行を先取りした感のあるフード付きの上着の下にTシャツを重ね着している。これが首回りにセーラー服的意匠を作っている。

 このフードが妙に長いのは、魔法使いの帽子を意識したのだろうか?

 下は黄色いフレアのやたら短いスカートで、作中ではかなり頻繁にパンツが画面に映り、俊夫から注意されても笑ってごまかすあたりで子供っぽさが演出されていた。

 靴下は長さが左右比対称で右にだけリボンがあるという、オシャレなデザインだ。

 全体として、ビビットな色使いながらもうるさすぎず、今見ても非常に完成度の高い女児服ではないかと思う。

 かなりの率でフード部分にネガとポジが入っていて、肩越しに顔をのぞかせるのも可愛い。


 主人公の家が当時大流行していたクレープ屋である事も含め、現実の流行を意識した結構オシャレなアニメであったのは間違いない。

オタク的にはマミはスルー


 女子には普通にマミが憧れの対象として人気だったように思うし、実際にマミに憧れて芸能界入りした、というような話もちょくちょく聞く。

 ただ、萌え(男性オタク)的には完全に小学生の優の方が人気があった。

 当時の感覚としてても、髪が紫でアイシャドウと口紅をつけたマミは、可愛いけど若干ケバい印象だったように思う。


 一例では、同人誌で「PONY METAL U-GAIM」という森沢優をロボ化した設定集が作られ、それがガレージキット化されるわ、プロのクリエーターを巻き込みプロモーションアニメまで作られるわという事態となった。

 当時はラムロイドとかMS少女とか、美少女とロボを行ったり来たりするのが流行っており、そもそも人気があった優が、ヘルメットっぽい頭からの連想でロボット化されるのは必然であったとも言える。

 ちなみに「L-GAIM」のもじりタイトルであるが、L-GAIM感はあまり強くない。頭部のセンサー(?)が開くと猫耳風になるとか、実にもうオタクが喜ぶデザインとなっている。


参考:pony metal U-GAIM - YouTube


 「うる星やつら」や「ミンキーモモ」に比べると、アニメや特撮パロディ的なものは少なかったが、制作者も若くアニメファンと近い感覚て作られていたのは間違いない。

 その頃のアニメに特徴的なモブシーンに他のアニメや特撮のキャラが登場することもあったり、どー見てもアニメ監督の押井守そっくりのキャラが順レギュラーで出てたりする内輪受けもあった。

 本編31話には怪獣(ほぼゴジラ)の着ぐるみ着たギャグ頭身の優という、可愛さ的破壊力抜群でオタクが放っておかない絵も登場している。


 当時は世間的には「小学生が全裸だろうがしょせんガキ、エロではない」的な雰囲気もまだまだあったが、50話の森沢優の妙に気合いの入った入浴シーンの作画に、世のオタクは騒然となったものだった。

 今だと逆に世間が意識し過ぎて、TV作品ではあそこまでは描きづらい空気で、2013年現在のアニメでは泡は勿論、湯気や光が大活躍している。

 ロリコンブームが盛り上がりつつも、1989の所謂「宮崎事件」発覚以前で世間の認識はゆるい、という時期ならではの状況と言えるだろう。


 劇中ではみどり君という太ったキャラクタが「優ちゃん可愛い!」を連発し、ある種オタクの代弁者となっていた。

 そもそも優は物語の最初から最後まで俊夫一筋なので、みどり君が報われる筈がないのだが、ラストのラストで優とは別の美少女とカップルになっている絵が挿入され、なんだかオタクも胸を撫で下ろすのであったりなかったり。

OVA


 1984年にはOVAによる追加エピソードの発売という、世界初の試みがなされた(OVAでははなく映画では既にある)

 追加エピソードだけでは不安視されたのか、総集編+追加エピソード「永遠のワンスモア」という形で作られており、試行錯誤の時代だった。

 このOVAが好評だったので更に、続編「ロング・グッドバイ」が作られ、ミュージッククリップの形でも2作リリースされている。


 これらの成功が本編+OVAでの追加エピソードという形を定着させる一因となり、旧作の寿命延長となってファンを喜ばせている。

 とは言え、TVで全然完結してなくて映画やOVAで最終回が作られるような作品もチラホラ見かける現状は、なんともむずがゆい。

 TVが斜陽化しネット視聴が広がった今、アニメでちゃんと金を稼げるシステムが確立されるまでの試行錯誤はまだ続いている。

まとめ


 クリィミーマミは萌え的文脈下ではミンキーモモの影響下にある作品及びキャラクタであり、それほどのターニングポイントではない。

 ただし、隣接領域であるというか本来の領域である女児向けアニメ作品としては、間違いなくターニングポイントに位置している。

 特にアイドルものと恋愛物のアニメという文脈からは、キー作品として外せないものである。

遊戯的、競技的

 ゲームには一般的には、楽しむ事が優先される遊戯的ゲームと、勝敗が優先される競技的ゲームがある。

 本サイトでは前者をゲームと定義し、後者は競技と定義する。

 ゲームにある競技性(勝ち負け)は、あくまでも競技性を取り入れる事により、ゲームがより「楽しくなる」からという立場だ。

後課金方式は、どーも自分には合わないね。

どーも私は、あとからちょこちょこ課金する手法のゲームは好きになれない。
どのくらいの投資を行うのがベストバランスかよくわからないからだ。
金払った上にバランス崩してゲームもつまらなくなったら、もー目も当てられない。
前払いだと、あとはもうプレイに集中すれば良いんだけどね。

色とゲーム

 ドラクエのウインドウに代表される、体力状態を示すもの。

緑(安全)、白(通常)、黄(危険)、赤(危険大)

 ボスキャラは赤くなるのが、常套手段。

 対戦ゲームの体力ゲージでは、緑か黄のゲージで背景色が赤が多い。ダメージを受けると「赤の部分が大きく」なり危険な状態になっている事が直感的に分かる。
 この事から分かるように、プレイヤーの体力ゲージには赤を使うべきではない。ダメージを受けると「赤の部分が小さく」なるため、なんだか安全になったような気がする。
 対戦ではない場合、敵の体力ゲージに赤が使われるのはいい。敵の体力が減る(赤が少なくなる)ということは、プレイヤーが安全になると言う事だからだ。

 そういう意味では、ゼルダの伝説シリーズの赤いハートは、あまり良くない。