メイド



殻の中の小鳥1996が、メイドをメインに置いた作品としては嚆矢と言われる。

 ただし、メイドおよびメイド服は、それ以前より漫画・ゲーム・アニメに、かわいいものの典型の一つとして現れている。

 しかしメイドは、女中、女性奉公人なわけで、主人いてこその存在であり、単体では成立しない。そのため漫画やアニメに登場したとしても、「脇役」の域を出ることはなかった。ヒロイン(あるいは少年の女装)であったとしても、屋敷に潜入するというシチュエーションで多く出ているようで、専業メイドでメインヒロインというのは、1980年代には記憶にない。

 さらにその前はメイドは単に西洋の家政婦さんであり、おばさんであることが多く、そもそも萌え対象ではなかった。

メイド服


 カフェーの女給さん、ファミレス・喫茶店のウェイトレス(「アンナミラーズ」「神戸屋キッチン」「馬車道」など)、給仕をする職業は制服が多く、その制服もメイド服からの転用、あるいは類似があり、現在の萌えメイドへとつながっている。メイド喫茶などは「先祖返り」と言っても良い。この流れからは露出が多くボンデージのような風俗的要素の強い、フレンチメイド型のファッションとなる。

 そしてメイドといえばパフスリーブのエプロンドレスだが、その日本でのイメージはメイドそのものよりも、ディズニーアニメの「不思議の国のアリス」のイメージから来ているように思える。作業用の服というより、ロリータファッションとしてのエプロンドレスである。その流れからいけば、所謂ゴスロリファッションのメイドという、職業としてのメイドと考えるとありえない、フリルやリボン・レースで飾り付けたファッションの成立も容易に納得できる。

 この二つと仕事着としてのメイド服が混ざり合って、現在の萌え領域でのメイド服がデザインされている。


 でじこ1998は、ゲーマーズのマスコットキャラクタとして、意図的に萌え要素を詰め込んでデザインされた。

 その際、採用されたのは猫耳+メイドである。当時これらの要素が、萌えの重要なポジションを担っていることが認識されていた、といえる。

参考:DiGiCharat Official WebSite でじこのへや(現在衣装デザインはリニューアルされている)

台詞


 メイドの台詞といえば「ご主人様」である。

 萌えの感情の発生のメカニズムの一つとして、自分より社会的・能力的に下のものを愛でるという、はっきり言葉にするとなんとも浅ましいものがあるのだが、「ご主人様」という言葉は、この気持ちを大いに刺激してくれる。

 似たような言葉で「旦那様」「お館様」などあるが、「ご主人様」が定着したのは女性に対しても使える汎用性もさることながら、性的プレイとしての「女王様と奴隷」のような響きがあるのも重要な要素であると思われる。なんといっても、メイド要素の広がりはエロゲーを中心としたものであったことは否定できない。


 もう一つのメイドの定番の台詞「ご奉仕」は、その言葉の中に「見返りを求めず尽くす」という意味が含まれているため、メイドに相応しい言葉と考えられたのだろう。他の「ご奉公」なんかだと「最後の」と組で使われることが多く、老人ぽいから避けられたのだと思う。

 さて、ご奉仕とは当然エロゲー(他エロ関連)では性的なものを指す。今やエロとは関係ないメイドでも「ご奉仕」という言葉でエロが想起されるどころか、もう誰であっても「ご奉仕」と言っただけでエロい気がする。スーパーのおっさん店長の「ご奉仕価格」ですらエロい。

 エロの外でいくと「東京ミュウミュウ2000の「ご奉仕するにゃん」は、メイドではない(ただしバイトの制服が明らかにメイド服)が、あまりにもと言えばあまりにもな萌え狙い台詞。また「花右京メイド隊2001のオープニングではご奉仕を連呼している。このころでは「ご奉仕」という言葉がエロいということは、もう前提として使われていると考えるのが自然だ。


 この二つの言葉はあまりに強力(にエロを思わせる)なので、まじめなメイドを描こうと思うと逆に避けるべき言葉ともなっている。

組み合わせ


 本来メイドにはない要素だが、組み合わされることの多いパターンが存在する。

 ギャップ、あるいは機能を分かりやすくする。

戦闘メイド


 従者のパターンとして護衛がいる。仕事上ずっと主人と一緒に居られる上に、命がけである故に主人に全力で尽くしている印象も強い。当然、萌え要素の一つである。

 護衛もメイドが兼任したら、キャラ増やさなくていい上に萌え要素も付加できてしまう。しかもかなり強力な要素だ。なんだかんだで、メイドの半数ぐらいは強かったり戦っていたりする気がする。


「赤い牙」1982でもメイド服をヒロインが着ていたりする柴田昌弘作品だが、「サライ」では護衛メイドという、もーなんちゅーか「萌えまっしぐら」ですか、な作品を発表した。

 また、「ブラック・ラグーン」ロベルタの驚異的戦闘力は強烈な印象を残した。

メイドロイド


 そもそもメイドは、女性の社会進出や家事の機械化(自動化)により、急速に廃れた。家庭内労働は現在機械がその役割を負っていると言える。

 そしてそれらの機械が、人間の仕事を肩代わりすることが目的であるロボットへと変化するのも自然な考えであろう。

夏への扉」のハイヤードガール(文化女中器)は、洗濯機や掃除機を経ずに一足飛びにメイドからロボットへ移行した姿だが、メイド→ロボットの相関性を端的に表している。

 現実に開発されている家庭用ロボットも、恐怖感を与えないように、平均身長より小さい女性型を念頭において作られている。

 メイド+ロボットの場合は、さらに先に述べた護衛要素も持っていることが多い。ロボットといえば戦闘とセットなのが漫画・アニメのパターンだ。


わくわく7」ティセ・ロンブローゾ、「To Heart」マルチ、「鋼鉄天使くるみ」くるみ、「HAND MAID メイ」メイ、「まほろまてぃっく安藤まほろ


参考:メイド - Wikipediaメイド服 - Wikipediaコスプレ系飲食店 - Wikipediaコミダス〜キーワードで学ぶ現代マンガの基礎知識:メイド


P.S

 個人的には、高橋葉介の漫画に登場するメイドが好きだ。ミルクも勿論、魔実也君の女装もいいぜ。鳥の羽のような肩のフリフリが良いぜ。