ロボット



 人造人間はアンドロイドとも呼ばれるが、女性型の場合はガイノイドと呼ぶのが正確だ。男性型女性型を包括した呼び方をヒューマノイドと呼ぶが、ヒューマノイドは人造でない異星人なども指すので、なかなかややこしい。

 ここでは、ロボットで統一する。


 ロボットとは、SF少年が憧れるガジェットの最たるものである。それに美少女が組み合わさって、萌えないことがあろうか。

 ただし、そもそもが矛盾のある二つが結びついたロボット少女は、その萌えの発生にしても、矛盾に満ちたものだ。

人造美人


 ピュグマリオンコンプレックスで有名な、象牙の美女ガラテアを例に出すまでもなく、作られた美しさに惹かれる心は人間の根源的なものである。

 アトムは天馬博士が交通事故で死んだ息子トビオの身代わりに作られたというのは有名な話だ。手塚治虫がアトムを女の子としてデザインしたという話を合わせて考えると、究極の美少女を作り上げる物語、という側面も見えてくる。


 作られた理想の美少女、それは美少女キャラクタ全般に通用する言葉であるが、ロボット少女は、それをさらに意識させるものといえる。当然、ヒロインとして登場することが多い。

 星新一「ボッコちゃん」は、男性の女性に対する反応を戯画化して描き出した傑作で、ロボット美少女について語る際には、一読をオススメする。


「がんばれ!! ロボコン」ロビン、「燃えろ!!ロボコンロビーナ

解体される女


 ロボットは記憶チップなりなんなりの核が破壊されない限り、他の部分は壊し放題だ。

 ロボット少女は破壊され、あるいは解体・分割され、内部をさらけだされる。

 ことあるごとに首が外れる「Dr. スランプ」則巻アラレが代表的なものだ。


 これは全身サイボーグでも、ほぼ同じ。むしろ精神部分(脳)が人間であるだけに、痛みにリアリティがあり、破壊される傾向が強い。

攻殻機動隊草薙素子、「銃夢ガリィなんかは代表的なもので、ことあるごとにその体は破壊されている。


 これらは身体欠損に感じるフェティシズムと同じものを持っている。

人外


 ロボットは、いくら外見が似ていようとも人間ではない。人間でないどころか生き物ですらない。

 人知によって人に似せて作られたロボットだが、それ故に人との違いをいっそう際立たせる存在だ。

 これは男性にとって、極めて近いながらも理解できない女性のカリカチュアともいえる。


 ロボットは人間とは異なる独自のパターンで行動し、周囲の人々を困惑させる。

 人としての心を持たなかったロボット(AI)が、徐々に人の心を獲得していくロボットものの王道パターンは、異邦人(卑近な例では転校生)が徐々にその土地になじんでいく過程そのものだ。

理解された体


 ロボットは人間によって作られた。ということはその構造は人間に完全に把握されている。

 萌えの発生メカニズムの一つに「理解できる」というものがある。

 モノローグで、漫符で、その他様々な手法で、萌えキャラは受け手に理解を促す。そのことによる、理解できている安心感。これが萌えを発生させるパターンの一つだ。

 設計図があり、理論があり、制作者がいるロボットは、人外の不可解さ神秘性と同時に、全てがさらされ理解されているアンビバレントな存在だ。


ユリア100式」でダッチワイフとしてのスペックがことあるごとに解説されるのも、この辺りの面白さ(萌え)を刺激する仕掛けといえる。まぁ主にギャグだが…。

交換可能な体


 解体される体であり、理解された体であるロボットは、交換される体でもある。

 少女の体に不釣り合いなグロテスクな外観の機械が、「身体の一部」として組み込まれる。これは道具よりもさらに強力な違和感があり、少女性を際立たせる造形だ。

 と同時に、強烈であるが故に嫌悪感も持たれるため、それほど一般的な萌えとはならない特徴でもある。

ユニセックス


 ロボットは繁殖能力がない。つまり性別がない。

 最初に例に出したアトムだが、性別がない故に少女だと考えるのも、まったく受け手の自由だ。

 ちなみに、アトムは、「メトロポリス」マリアとピノキオから発想を得たと思える、手塚治虫メトロポリス」の中性的キャラのミッチィの焼き直しだ。

 逆に少女型のロボットも、少年だと考えることも自由だ。

 故に、男性とも女性とも(主に受け手の妄想による)恋愛関係が成立する。

下僕


  複合要素-職業-メイドでも語ったが、ロボットは人間に奉仕するために作られた。

 そのためロボットは、メイド、護衛、その他諸々の下僕と同様の役割、しかも強力な忠誠をもったキャラクタとなる。ロボット三原則、良心回路など、様々な呼び名はあるが、逆らえない絶対のものとして人間への服従(やそれに類するもの)が植え付けられているからだ。

母性


 上記下僕と重なる属性、というと少々語弊があるが、要は「無償の奉仕を与えてくれる存在」としてのロボットである。

 様々な作品で、看護・育児ロボットという例は、少なくない。オタク高齢化の今後は、介護ロボがメインヒロインになるのも珍しくなくなるだろう。


「レインボー戦隊ロビン」リリ、「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」オルガ

守護者


 女剣士と同様な要素だが、圧倒的パワーを持つロボットは、守護者としての要素を内包することが多い。これは母性とも重なる。

参考:アーマー


舞-HiME」深優・グリーア、「まほろまてぃっく安藤まほろ

科学


 ロボットは科学でできており、その思考も論理的で冷静であることが多く、また知識も豊富であることが多い。しかし、人間的・社会的には適応できていない。これが何かといえばオタクそのものである。

 萌えを想起するものの一つに、自己類似性がある。要は自分に似た者を好きになる、ということだ。


「THE ビッグオーR・ドロシー・ウェインライト、「RD潜脳調査室」ホロン

純粋無垢


 ロボットは論理的であり、感情を持たず、人に奉仕する。

 まったく純粋に悪意も善意もない姿で描かれることが多い。

 萌えとしては、世間擦れしていない無垢なキャラクタが好まれるが、ロボットは全く完全にここに当てはまることのできる要素といえる。

 ピノキオのように、人間に憧れるということで表現されることが多い。


SoltyReiソルティ。


参考:人造人間 - WikipediaRobot, Computer and AI Dictionary