ネコ耳
ケモ耳、特に猫耳を考察したい。
ケモ耳は大きく二つに系統が分かれる。ひとつは獣人の耳、つまり身体としての耳がある系統。もう一つはアクセサリとしての耳、取り外し可能で人の耳は別にある系統。
「鳥獣戯画」の昔から、風刺を行う際は動物を擬人化するという手法が多く使われ、風刺画としての漫画、さらに漫画映画であるアニメへと、動物の擬人化キャラは受け継がれた。
例えば、アニメの代表キャラであるミッキーマウスはネズミだし、「長靴をはいた猫」ペロは東映のシンボルキャラクタでもある。
そんなわけで、そもそも萌え領域では、人と動物の性質をもったキャラクタにぜんぜん抵抗が無いということが前提としてある。
さて、そんな擬人化キャラの中でも、萌えに進出するための条件を考えてみよう。
例えば、リスの耳がどんなか思い出せない人が多いだろう。良く知られている、身近であるということは、萌えの重要な用件の一つだ。ただリスのしっぽは印象に残る「0マン」リッキーはリスしっぽだし、あるいは今後代表的萌え要素になる可能性もなくはない。
そして、耳の形が分かればイイというものでもない。もしそうなら、世の中にはゾウ耳少女が溢れていることだろう。モチーフとなる動物に萌え要素が含まれている必要がある。ゾウは厳しいと言わざるをえない。
では、代表的な可愛いキャラ動物と萌え耳との関係を見てみよう。
ネズミミ
まずは、可愛いキャラクタの代表ともいえる動物にも関わらず、萌え耳となっていないネズミだ。
ミッキーマウスや、ジェリー、トッポジージョ、ガンバ、ピカチュウなど、ネズミキャラはわりと多いが、萌えの世界ではほとんどない。
萌えげっ歯類としては、完全にウサギに負けている。鳴き声の「チュー」も可愛らしいのに。
すでにミッキーマウスの耳のように既に図案化されている形もあるので、どういう形にするか迷うこともないはずだ。
しかし、逆にそのことが萌え耳にネズミがほとんどいない理由だろう。あの耳が付くと「ミッキーマウスのコスプレ」にしか見えなくなる。
弱点は、不衛生の象徴であること。萌えとは相容れない、といっても過言ではない。ただ、ネズミキャラとしては成立しているで、今後予断を許さない。
ブタミミ
つぎは現在「むちむちポーク!」絶賛稼働中のブタだ。個人的には「ぽっちゃり」がそろそろ来ると思っているので、ブタ耳は今後期待が持てる萌え要素といえる。
だいたいブタという動物は清潔だし、かなり可愛い。すでに「三匹の子豚」のようなキャラもいて、可愛いものとしてはわりと認知されている動物である。
耳の形としても、耳の先をちょっと折った特徴的図案化がなされていて使いやすい。
耳自体が食材として有名だし。イヌキャラになめられたり齧られたりして、はわわー、となると萌えるかもしれない。
鳴き声の「ブゥ」はふてくされた感があるので、上手く使えば萌え要素となりえる。
弱点はブタが現在ほぼブスとイコールで使われる蔑称であることが一番大きい。
どうしてもブタそのものより、食材としての豚肉の方に馴染みがあるため、親近感として微妙であること。
キツネミミ
さて、ここからが萌えミミの本番、キツネミミだ。
キツネは日本では狐狸妖怪といわれる通り、人を化かすものの代表の中でも特に頭に列せられる程の動物である。
キツネは人に化けるが、化け方が下手なキツネは耳やしっぽ、ひげなどが残ってしまう、なんていうのが定番で、キツネ耳というのは、キツネが化けたという状況で頻出する。
そのような伝統的キツネ耳キャラが成立しているので、逆にキツネが化けたわけではないキツネ耳キャラは少ない。
鳴き声の「コーン」も可愛い。
近年、身近にキツネを見ることが少なくなったため、萌えキャラに必要な親しみが希薄なのが弱点。
イヌミミ(オオカミ)
極めて身近な動物の代表中の代表といえるだろう。
「のらくろ」「グーフィー」「犬夜叉」などイヌ(耳)のキャラは少なくない。ただ、多くもない。
萌えキャラの代表的イヌ耳となると、皆無と言ってもいい。「名探偵ホームズ」ハドソン夫人ぐらいか。
また、人との結びつきが強いことから、特にキャラ化しなくても本来のイヌでドラマになる、ということも、キャラ化されない理由として強いだろう。
「忠犬ハチ公」「南極物語」などは代表的なもので、主人をいつまでも待つ、というイメージはそれだけで泣ける。
また残念ながら、犬のイメージは優秀すぎる。優秀なだけでは萌えはない。
「イヌのおまわりさん」のように、公僕・まじめの印象が強く、イメージとしての意外性や面白みに欠ける。
また、これらは男性的な性格とされるため、ともすれば萌えキャラの萌えを抑制してしまう。
代表的なモンスターとして狼男が存在することも、女性イヌ(オオカミ)キャラクタを想像しづらくしているものと思われる。
ただし「狼と香辛料」ホロ(TV版2008)の登場により、その流れは変わりつつあるようだ。ただ、ホロの容姿や性格はどちらかというとキツネ的でありんす。
ウサミミ
兎の耳は、比較的身近であり可愛いものの代表である。
ウサギはミッフィー、バックスバニー、ピーターラビット、その他沢山のキャラクタが存在する。
ウサ耳は、雑誌PLAYBOYを発祥とする、バニーガールという極めてキャラっぽいコスチュームが存在する。
ウサ耳カチューシャを筆頭に、レオタード+網タイツ+ハイヒール+蝶ネクタイ+燕尾+腕むき出しでカフス(袖)、兎しっぽと萌え要素のオンパレード、「やるなアメリカ」と言わざるをえない。
「DAICON4オープニングアニメーション」の女の子を代表的キャラとし、「涼宮ハルヒの憂鬱」でみくるやハルヒがバニーガールの格好をしたり、「月面兎兵器ミーナ」というウサ耳を全面的にフィーチャーしたアニメが作られたりして、常に一定の人気をもった萌え耳である。
ウサ耳は圧倒的多数に人の耳も付いている。しかも、兎的性質(例:繁殖能力が高い→エロい)をキャラクタがもっていることはまずない。
これはウサ耳が、もはや兎の耳というより、バニーガールの耳という要素の方が強いということを示している。
赤い目の白ウサギ(アルビノ)のイメージが強いことから、赤い目と白い肌でウサギを連想させる、というキャラ作りは、「新世紀エヴァンゲリオン」綾波レイをはじめとして、たびたび行われる。
ウサギは、ほとんど鳴かないので、鳴き声でキャラ作りができないのが意外にイタい。しょうがなく、鳴き声の代わりに無理矢理「ぴょん」が使われる。
また、外見的特徴の一つの「出っ歯」が萌えキャラと相性が良くない。
参考:バニーガール - Wikipedia、ウサギを主題とする作品一覧 - Wikipedia
ネコミミ
いよいよ本命のネコ。
猫の耳は感情表現器官として重要な役割をもっている。他の動物、例えば犬の場合は感情表現は耳よりしっぽで行われる。
萌えは、キャラクタの内面をキャラクタデザインなどにビジュアル化して表す、という側面がある。
現在の気持ちを漫符を使わずに、ネコミミが表現してくれるなら、そりゃもう萌えるというものである。
絵として、頭頂部近くに配置した場合、髪に隠れたりせず全方向から見える。
頭部は流動的な髪で覆われているため、位置を示すマーカーが存在しない。そのため特に後方から見た場合、立体感に欠ける。アニメーションした場合もシルエットとしてはほぼ球でしかないため、ダイナミックさに欠ける。
これらの問題は、ケモミミを付けることで解決される。さらにネコミミの場合は、人間のシルエットからの逸脱が小さく描きやすいが、上述の効果は十分にもっているため、極めて使いやすい。
猫は性格的にツンデレ傾向にある。そのデレの部分が単に「おなか減った」とか「寒い」とかの理由で人間に寄ってきているのであったとしても、普段は勝手に遊んでいて寄ってこないのに時々甘えてくる、というのがツンデレだと思わせる。
その他、すぐ寝る、またたびに弱い、一つのことに集中できないなど、ダメ要素が多くあることがポイント高い
牙があり、これは萌え要素の一つである八重歯に転化できる。
好き嫌いが分かれるが、猫目も萌え要素の一つである。
このように、猫は耳を起点に他の萌え要素が芋づる式に付加されていく。
さらに、日本には猫又という人に化ける妖怪の存在もあり、キツネと同様の成立の経路もある。
「泥棒猫」が男を寝取る女の意味で使われることからも、猫=(色気のある・悪い)女であるという連想は一般的である。
米国でも漫画「バットマン」キャットウーマン、映画「キャット・ピープル」や、ミュージカル「キャッツ」など、猫=セクシーな女性的な連想や映像、図象は世界的なものと見て良さそうだ。
また、オタクがSFファンをコアとして成立した経緯もあり、萌えはSFが源流のものが多い。ネコミミもSFから流れてきたモチーフと見ることもできる。SFには、「夏への扉」「敵は海賊シリーズ」など猫が登場する作品には事欠かない。
特に「人類補完機構シリーズ ノーストリリア(帰らぬク・メルのバラッド)」ク・メルが、大変に人気のキャラクタであり、猫+少女というモチーフは漫画・アニメにネコミミが進出する以前から、SFファンにはなじみ深いものであった。
これだけの材料が揃っている猫が、萌え耳の代表にならないわけがない。
萌えの系譜としては少女漫画「綿の国星」→少年漫画「猫でごめん!」→エロ漫画「夢で逢えたら」といったところか。
参考:ネコを主題とする作品一覧 - Wikipedia、猫耳 - Wikipedia、こてんねこみみ
獣耳(ケモミミ)まとめ
ネコミミ強ええええ!!
キャラにケモミミを付加する理由がほぼ満遍なく入っているという、ロイヤルストレートフラッシュ状態。