「VOCALOID」初音ミク



 今回は、萌えの代表的キャラを一人だけ取り上げて、深く掘り下げてみる。

 二回目は、いきなり時代を飛び越えて、初音ミク


 なお、今まで取り上げたキャラのラインナップは萌えキャラ一覧を見てほしい。


 初音ミク2007-08-31発売のクリプトン・フューチャーメディアの 歌唱ソフトで、コアはVOCALOIDというヤマハの技術。ジャンルでいえばDTMソフトである。

 漫画でも、アニメでも、ゲームでもない、他のなんのメディアでもない「ツール」である。

 これにはかなりキャラクタ業界は虚を突かれたのではないだろうか、なんと楽器だ。


 公式設定は、今までの常識からすると最低限以下。性格すら判らない。

 この勝手にやってくれ感と、そもそもツールである事はCGM(消費者生成メディア)時代の黎明を飾るに相応しいキャラクタと言える。

外見要素


 絶対領域、AI・アンドロイド(的)、プリーツスカート、肩出し、ツインテール、フリル、ヘッドフォン、ラッパ袖、ネクタイ。

 こう並べてみると、かなり狙った要素がてんこ盛りで、あんまり新しい造形ではない。

 ツインテールが尋常じゃない大きさであることが特徴だが、プリーツスカートと合わせて、下手するとセーラームーンのパクリと言われかねない。黒い袖など事務のおばさんにも見える、極めて微妙なデザインでもある。

 初音ミクは、いい具合に両方ともあまり目にしなくなったタイミングで出てきた。


 初音ミクは、ヤマハの名器DX7の擬娘化であると捉えることもできるが、この点は今のところさほど注目されていない。

 かなり細かいディティールが入っているので、今後のネタの発生源となるかもしれない。


 だが、グレーと青緑の組み合わせは地味な色ゆえに他にない特徴となっていて、これにワンポイントの赤を入れると、色だけで「初音ミク」と認識させる事ができる程。

 数色塗れば、誰でも初音ミクが描けるという判りやすさ。加えて公式画像が数枚なので、裏側のデザインすらよくわからない。これがテキトーに描いてもOKというユルさにもつながっている。

 またこの青緑も初代iMacボンダイブルーを思い起こさせる微妙な色で、塗る人によって青から緑まで相当に幅がでているが許容されている。グレーと青緑の組み合わせが、いままでほぼ存在しなかったので、ミク一人で使い放題の状態なのだ。


 現在、ニコニコ動画、やzoome、イラスト投稿型SNSのpixiv、さらにはクリプトン・フューチャーメディアが運営するピアプロでイラストや動画が大量にアップされている。

 これは、単に人気があるだけでなく描きやすいキャラである事を示している。


参考:クリプトン | VOCALOID2特集初音ミク - Wikipediaバーチャルアイドル - Wikipedia



アホの子としての初音ミク


 初音ミクは、ロイツマ(Ievan Polkka)でネギを無心に振る姿で、アホの子属性を決定的なものとした。

 ゲイナーダンスと双璧をなすネギ回し。「ブリーチ」井上織姫に始まり、様々なキャラがチャレンジしたネギ回しだが、この動画でネギは初音ミクの持物となった。ちなみに回しから振りへの転換も初音ミクだ(これはかなりどうでも良いが)

 このデフォルメキャラは「はちゅねミク」と呼称される。「涼宮ハルヒの憂鬱」の鶴屋さんの派生キャラ「ちゅるやさん」から来ていると思うが、こちらも相当にユルいキャラ。


 しかし、幾つかの方向はあるものの初音ミクは自在にその性格を変えている。性格が違うということで嫌われる事はなく、概ね「それもあり」と好意的に受け取られている。

 作品によって性格を変えるその姿は、完全に「バーチャルアクトレス」化していると言えるだろう。

妹キャラとしての初音ミク


 VOCALOIDシリーズとして既にMEIKOKAITOが存在していたため、妹キャラが自然と定着した。

 MEIKOKAITOの時点でブームが起きなかった理由は、値段が高いとか、声がプロ歌手すぎて遊びにくいとか、単純に歌わせるとロボ過ぎるとか、パッケージのイラストが流行とずれてるとか色々あるだろうが、発売当初ニコニコ動画2006-12-12がまだなかった、というのが一番の理由だろう。

 しかし、ニコニコ動画で人気のあった曲のMEIKOによるカバー「おっくせんまん!」「アンインストール」が2007-04ごろから投下され、ニコニコ動画という会場の空気を暖めていた事も、2007-08-31に発売された初音ミクのヒットの理由の一つといえる。

 個人的にはVOCALOID2の第三弾はMEIKOKAITOのバージョンアップであってほしい。

アクトレスとしての初音ミク


「ウィンビー国民的アイドル化計画」1993ギャルゲーでもなんでもないシューティングゲームコナミツインビー」の2Pキャラをアイドルにしようという、先見性はありつつも無謀な計画。残念ながら頓挫。「合い言葉はBee!」


 コナミはその後、社会現象化する程のヒットである「ときメモ」の藤崎詩織がキャラソンを出す。盛り上がりはあったが、商売っけが鼻につく展開でもあったし、結局「ときメモ藤崎詩織」から離れることはできず、バーチャルアイドル化することはなかった

 ちなみに、冷静に判断して「ときメモ」の絵で萌えるのはかなり困難だが、声によって抜群の破壊力を持ったことは、誰もが認める事だろう。


 他にも「サクラ大戦」をはじめ様々なキャラ人気の高いソフトが現れたが、バーチャルアイドル化したものはあまりなく、同じ世界観の中での活動にとどまっていた。

Dの食卓1995ローラは、積極的にバーチャルアクトレスとして活動する姿勢を見せていたが、本体のワープの解散という残念な結果となった。


 そんな中現れたのが「鉄拳」「ゆめりあ」のナムコTHE IDOLM@STER」である。

 テクモ「デッドオアアライブ」、RED「N.U.D.E@」など、ギャルゲーマシンとしての地位を築きつつあったXboxに満を持してアーケードから移植された。

 ゲームそれ自体の売り上げはさほどではなかったものの、追加データの売り上げではXbox360随一。さらに、ニコニコ動画では豊富な楽曲とダンスのリミックス動画が大量にアップされ、ニコニコ動画躍進の一翼を担う程となった。

 ちなみに派生作品である「アイドルマスター XENOGLOSSIA」は巨大ロボットアニメであり、「THE IDOLM@STER」とは全く世界観を違えたものだが、世界観に囚われなくなったのは、正にアイドルになったと言える事として評価できる。が、声優が違うのは大間違いだ。アイドルとしての一貫性が無くなってしまって非常に残念。


(さらにちなみに、これは以前「アイドルマスター XENOGLOSSIA」と同じサンライズの「舞-HiME」と「舞-乙HiME」がスターシステムを採用したこともあって浮かんできた企画だと思われる。2008-04-15追記)


 その点、初音ミクはそものものアイデンティティが「声」である。これは強い。

 どんな作品に登場したとしても、確固たる軸がある。そして背景世界がないので様々な展開が可能。

 問題は…台詞を喋るのが極めて下手ってことだ。

 現在は、そのヘタレっぷりが愛でられているが、あまり本格的な作品は無理だろう。

 中の人こと声優「藤田咲」が声を当てたのでは、それは初音ミクではなく藤田咲になってしまう。

 とはいえ、PVの登場人物として十分な魅力を発揮してくれるだろう。

 また逆に文字だけの台詞なら、あの声が読者の中で再生されるので、名作が産まれたりするかもしれない。

コンピュータボイスとしての初音ミク


 PCエンジンのハドソン「No.Ri.Ko」1988-12小川範子のサンプリング音声は、単純に50音の組み合わせが行えるだけで、まったく自然と呼べる代物ではなかったが、ユーザが入力した声を発音させることができるというのは、全く画期的だった。

 勿論、購入者は卑猥な事を言わせまくった(に違いない)


 音声合成少女という点ではコンパイル魔導物語1989アルル・ナジャが嚆矢かと思われる。アルルはサンプリング音ではあるが、その発声は合成音としての印象が強い。


 パイオニアLDC「NOëL」1996-07は文節で区切ってそれを組み合わせて喋ったりアニメーションしたりするソフトだが、サンプリングなので発音は自然でも、間があまり良くない、データベースにないことを喋らせることもできない。とはいえ、アニメーションと合わせ、かなり頑張っていたので、懲りずにまたやってほしい。


 コナミときめきメモリアル21999-11入力した名前を自然な発音で呼んでくれるという、相当な破壊力を持ったシステムだったが、喋らせることができる単語・量・キャラなど、制約が大きかった。

 CD-ROMに卑猥な言葉のデータベースが美少女と同居しているとおもうと、ちょっと萌えなくもないが。


 8bit時代のコンピュータでは音声合成ボードは人気商品であり、「コンピュータが喋る」ということは未来を感じさせるギミックの最たるものの一つだった。

 実用的な意味からもスクリーンリーダはMacのText-to-Speech(Mackintalk)などが存在していたが、とりあえず(英語を)聞き取るのに支障はない状態で停滞してしまっていた(HyperCard / LibraryのSpeakerは、日本語を無理くりEnglish Text-to-Speechで発音させる)。ゴノレゴの吉野屋コピペで一時有名になったが、残念ながら神職人の調教で可愛い喋りを連発…とはいかなかった。

 Macが喋るのを聞いたとこがないユーザーは、以下をスクリプトエディタを立ち上げてペーストし、実行してみてほしい。かなり可愛い。


say "konnichiwa" using "princess"

 それはともかく、初音ミクはかなりの人に、ゴノレゴからいきなりジャンプしたかのような衝撃を与えた。当然そこで出る感想は「人類オワタ!」「全歌手リストラのお知らせ!」だったりする。


 しかし、特に発売直後は使い方が判らず、出落ちの曲が多かった。合い言葉は「ズコー」。

 だが、そこが逆に良かった。完璧なものより、できの悪いぐらいが可愛いものだ。完璧なものが最初から出てきたら、先の楽しみがない。

 前述のロイツマをはじめ、凄い勢いで初音ミクに合う曲調や歌詞、歌唱法が発見され、日々成長していく。それはもう一個のDTMソフトを越え、生きている感じを受け手に思わせるものだった。


参考 : 音声合成 - Wikipedia

DTMソフトとしての初音ミク


 1990年代にDTMブームというものがあった。

 楽器が弾けなくても、バンド仲間が集まらなくても、一人でコツコツやれるDTMは素人の音楽好きに歓迎された。

 ただ、当時は発表の場が結局ほとんど存在せず、自分のサイトに音楽ファイルをポンと置いても、なかなか聞いてもらえなかったし、聞いてもらっても感想など皆無に近い状態。それでやる気が続く方がおかしい。

 しかしこの状態はニコニコ動画という、疑似リアルタイムにコメントを付けられるシステムで、かなり解消された。


 そしてDTMブームが沈静化した最も大きな理由の一つは、ボーカル曲が作れなかったことにある。

 そこに「初音ミク」はDTMに欠けていた最後のパーツとして降臨したのだ。「初音ミク」購入者にはDTMやめてたけど、いっちょやってみっか、という気持ちになる人がかなり多いそうだ。

歌姫としての初音ミク


 アニメの中での歌姫といえば「魔法の天使クリィミーマミクリィミーマミ、「超時空要塞マクロスリン・ミンメイ、「メガゾーン23」時祭イブ、「マクロスプラスシャロン・アップル、「OVERMANキングゲイナー」ミイヤ、「明日のナージャナージャ・アップルフィールドなんかが浮かぶ。時祭イブやシャロン・アップルはコンピュータを使って作られた人物であることが、今見ると初音ミクの誕生を示唆しているようで面白い。


 電子の歌姫というモチーフは、オタク(特に理系の)の琴線に触れるものであるのは間違いない。


人工少女としての初音ミク


 人工少女を教育(調教)できるというのは、「ヴァーチャル・ガール」や「A・Iが止まらない!」「ぼくのマリー」「ちょびっツ」etc.の例を出すまでもなく、オタクの大好きなモチーフの一つだ。

 初音ミクはツールであるので、実際に教育できる。これに萌えぬ事があろうか。


 これは、ガイナックスプリンセスメーカー」のような、育てゲーにも似た面白さだ。


参考:複合属性-種族-ロボット - 鳶嶋工房ゲームザッキ


バーチャルアイドルとしてしての初音ミク


 ラジオ番組から発生した芳賀ゆい1989は、パーソナリティー伊集院光のノリの良さ乗せ方の上手さもあって、リスナーも上手く空気を読んだ投稿を送り、局地的ではあるが非常に盛り上がった。ラジオというメディア特性とも相性が良かったと言える。残念ながら明確なビジュアルのないこの遊びは高度すぎて、一般に広まることなく収束した。


 伊達杏子(DK-96)1996ホリプロが送り出した、バーチャルアイドルの走りで、3Dでモデリングされ人が声を当てた。中途半端に設定があったため、膨らませづらかった。中の人のアドリブのキレが(saku sakuジゴロウ並に)良かったらブレイクしたかもしれないが、女性アイドルが面白いことを言うとバラドルとして分離させられてしまっていた当時に、ウゴウゴルーガとアイドルを結びつける発想はなかったろう。

 今見るとそれほどのポリゴン数でもないが、当時の素人にはとても手が出せない高価な機材でモデリングされていて、とてもじゃないがファンが着せ替えして遊ぶとか、オリジナル写真集作るとか、そんな展開は無理だった。

 3D的にも2D的にも中途半端な造形で、狙い所が判らないキャラだった。

 微妙にバージョンアップしたりして、地味な活動が続き、2007年もリニューアルしている。しかし、セカンドライフという登場場所といいモデリングといい、その微妙感は「完全に悪い意味で」健在と言ったところ。

 単純な可愛さや企画の滑り具合以上に、ホリプロ電通臭が二次創作をやりにくくして、飛びつきにくい部分も大きい。さらに、ネットにアップされた動画も削除対象としている。もうアホかと。お前は、何をやりたいのかと。

 DKといったら64でしょ、えドンキーコングじゃないの?なDK-96。今や完全にネタ以外では取り上げられない存在ダテキョーであった。こんな調子ではブレイクは考えられない。


 くつぎけんいちテライユキ1998は、個人によって特にムーブメントを作ろうという意図もなく作られたキャラクタである。勿論、漫画家だからヒットを産みたいという欲はあったろうが、あくまでも個人の創作物である。それが注目を浴びた。

 漫画家が作っただけあって3Dで作られてリアルな感じであっても、2D的な魅力も十分な造形だった。

 テライユキは、安価なモデリグソフトである「Shade」で作られていたため、データ販売もされ加工も比較的容易だった。「Shade」のデータ以外でも、PS2の「Primal Image Vol.12000で簡単に写真撮影シミュレーションができた。現在「POSER」が、3Dアイドルフィギュア方面では先頭を走っているが、そのデータとしても存在する。

 一時は普通のアイドル並の人気となり、写真集、CD 、TV、CM出演と、あわやトップアイドルに上り詰めようかという程の勢いがあったが、後押しするネタに恵まれず。当時大量に産まれたバーチャルビューティーの代表という、思い出の中の存在になってしまった。

 データである性質上年を取らないので、再ブレイクしないとも限らない。


 蛇足だが「Primal Image Vol.1」はデータのできはともかく、全く面白みに欠けるソフトだった。当然Vol.2はない。そのつまらなさはセガ「デジタルダンスミックス Vol.1 安室奈美恵1997のほうがなんぼか遊べる、と言えば分かるひとには分かるだろう。ちなみにデジタルダンスミックスのVol.2もない。当時バカにされたデジタルダンスミックスも、同じくセガの「オシャレ魔女♥ラブandベリー2004への投資と思えば、まったく安いものである。バーチャルアイドルとしては他の追随を許さない怪物的ヒットであるラブandベリーだが、萌え方面への影響はほとんどない。というのもかなり意図的にキャラ作りで萌え要素を避けてあるからだ。

 萌え方面的には「らぶデス」が最先端。2D的なキャラクタを見事に立体化し、脳天を直撃する萌え仕草を装備している。ゲームはへぼっぽいが…。


 現在、初音ミクは漫画化され、ゲーム(日本一ソフトウェアトリノホシ」)にも登場するのかなというぐらいで、メディアミックス展開はさほど盛んではない。

 しかし、二次創作に関してクリプトンは一定の線引きをしつつも寛容で、ネット界隈では好意的に受け取られている。

 初音ミクは、バーチャルアイドルに必要なのは、「作りやすさ」であることを再確認させた。

CGMとしての初音ミク


 2chで流行したギコ猫をはじめとしたAAキャラクタによって、受け手は勝手に性格や物語を付けて楽しむキャラクタいじりを覚え、作り手の楽しみを知った。

 その流れはOS娘を代表とする擬娘化(擬人化)でも展開された。

 これらの動画は、特にFlash文化の中で開花した。

 しかし、そこで使われる楽曲はメジャーアーティストのものが多く、著作権的に厳しく、動画は削除対象となった。

 また、Flashムービーは極端に高度化してしまい、とても気軽に手が出せない雰囲気ができてしまった。

 これらが現在、flvではない純粋なFlashムービーが斜陽な理由となっている。


 また、上海アリス幻樂団東方Project」は同人(主として)シューティングゲームだが、音楽とキャラクタの組み合わせによる二次創作ムービーとして、ニコニコ動画で人気となっていた。これが初音ミクのムーブメントを産む土壌として大きな役割を果たした。


 そして、MADテープから連綿と続くマッシュアップ文化がアニメ界隈には存在していたが、YouTubeニコニコ動画で、Flashムービーや3Dムービーの文化と融合し、様々なPV的な動画が生産された。


 初音ミクは、そもそもがDTM ソフトであることから楽曲には事欠かず、ニコニコ動画という発表の場を得、さらに静止画は日々大量に産まれている。

 あまりに高度化してしまう危険を回避する事ができれば、初音ミクは今後数年CGMの中心的存在であり続けるだろう。

 既に、今まであげてきた要素だけでも、相当敷居が高くなってしまっている感もある。

 そういう意味では、要素を集約するための一連の作品(漫画やアニメ)が別に必要かもしれない。

自由の象徴としての初音ミク


 googleの画像検索に表示されない、ウィキペディアの記述削除、JASRACドワンゴに楽曲の作者の意向を無視して登録される、TBSのTV番組でオタクいじりの道具として使われる、などの虚実もろもろ混ぜた「権力の向かい風」に敢然と立ち向かう「ぼくらの自由の女神」としてのアイドル(偶像)初音ミク。この構図が非常に面白い。

 これらの事件(?)は、実にいいタイミングで発生して、発売以来現在まで話題に事欠いた事がない。

 恋人発覚、できちゃった結婚枕営業疑惑、そんな肉体的スキャンダルとは無縁のバーチャルアイドルだが、本質的に人間はゴシップ好きで、バーチャルアイドルもやっぱり色々騒動があった方が面白い。

 そこに、ぼくらの自由の女神という正義の幻想を乗っければ、それはもう盛り上がるというものである。

これからの初音ミク


 技術や萌え方面に疎い人にとって、TBSのアッコにお任せの和田アキ子初音ミクに対する「理解できません」の反応は、極めて当然である。

 また、歌い手として神にも近い和田アキ子が、赤子以前の初音ミクに脅威を感じる事は無いだろう。

 現在の初音ミクのポジションは、そんなものである。


 だが、だがしかしである。CGM時代の始まりを告げる歌を高らかに歌う初音ミクは、和田アキ子以上に「歴史」になるポテンシャルも同時に持っている。

 CGMは作り手と受け手との境界が希薄になり、全ての人が作り手であり受け手である世界だ。村の誰もが楽器を手に持ち歌い踊った世界に戻ることでもある。

 このパラダイムシフトが進行すれば、ブロードキャストの終焉となり、業界の慣習も経済も流通もコミュニケーションも何もかもを変えてしまう。

 そんな大変な革命を進行させている初音ミク、何の思惑もなく今日も歌う初音ミクに燃えぬ事があろうか。

 願わくばこの少女が、単に消費されて終わってほしくないものだ。それは我々の創造性の無さが露呈された証となってしまうからだ。


追記:よく考えたら、頭部はかなりクェス・パラヤだな。