エルフ

歴史

指輪物語」のエルフが萌え文脈でのエルフの基本だ。その後「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」を筆頭とするTRPGの種族モデルとされ、さらにD&Dを下敷きにした「ウィザードリィ」等のコンピュータRPGの定番種族とされた。
 そしてTRPGを含む日本の主要ファンタジーRPGにも採用されたため、日本でも定着したというのが大雑把な経緯。
 萌え界隈でのエルフの基本設定は「指輪物語」と「D&D」を混ぜ合わせたところが、現在の常識となっていると言って間違いない。

 日本でのエルフのヒロインの筆頭は、なんといっても「ロードス島戦記ディードリット1986だろう。
 ディードリットのキャラクタデザインは、日本でのエルフのイメージを決定づけた。特にあの特徴的なアンテナのような耳は、海外のエルフの絵では見られない独特なものだ。
 この動物っぽい耳は、猫耳やウサ耳と列ぶエルフ耳という萌え属性にまでなった。ちなみにエルフ耳はエルフ以外の種族でも尖った耳全般に使われる。つまりバルカン人もエルフ耳だ。
 他にも切れ長の目に緑の瞳、金髪とサークレット、緑の軽装の鎧など、どこか日本のエルフ像はディードリットのイメージに引きずられている。
 この「ロードス島戦記」→「ソード・ワールドRPG」を中心に起きたTRPGブームによって、エルフという種族も広まった。
 また、カードゲーム「モンスターメーカー」やガシャポンフィギュアシリーズ「甲竜伝説ヴィルガスト」などのライトなファンタジーも、エルフを広めるのに一役買った。

総論

 エルフという種族名がついていなかったとしても、明らかにエルフという種族も多い。
 このへんはエルフのイメージを使いたいが、エルフと名付けると作品イメージ全体がその名前に支配されかねないので種族名だけは避けておく、といった事情かと思う。
 例えば「ゼルダの伝説」シリーズのリンク(ハイリア人)が代表的なもの。

キャラ作りが簡単

 エルフはそのステロタイプが強固にあるので、ちょっとそれと違う所を入れただけでキャラが立つ。
ぽっぷるメイル」メイル1991なんかは、「魔法が使えない」という丸っきり当たり前のことが特徴になっている。

ユニセックスイメージ

 出自が妖精であるし、長命であることもあって繁殖能力が極めて低いという設定もあり、さらに男女ともに細身の美形という設定から、男女差があまりないユニセックスなイメージがある。
 具体的には女性は胸がなく、男性は筋肉がない。

 ただ、近年は胸の豊かなエルフの方が主流だ。どうも世俗化すると胸が大きくなるものらしい。

日本型のエルフの印象

 では多くのフィクション作品で描かれたエルフ族から、その姿を抽出してみることとしよう。
 勿論、以下は私の印象に過ぎないし印象でしか語れないものだが、日本の漫画・アニメ・ゲームのエルフ像をそんなに外してはいない筈だ。
 いちいちその特徴がどの作品(キャラ)に現れたものかは断らない。

外見属性

 おそらく一番の日本におけるエルフのイメージの典型はカプコン「D&D」シリーズに登場するエルフだろう。ディードリット以上にエルフイメージの真ん中に存在するデザインかと思う。
 たぶん、金髪のプリンセステンコー由美かおるアメリカ的イメージ。あの人ら年とらんしな。ただし、多くの米国のエルフのイラストよりずっと美しい。なんかしらんがアメリカエルフの絵は怖い。

エルフ耳

 ディードリットの極端に長い耳はキャラクタデザイナの出渕裕の勘違いだったらしいが、「ナイス勘違い」と言わざるをえない。
 あの長い耳があるおかげで、エルフの耳は単なる種族の区別のための記号から「表情器官」へと昇格したからだ。
 分かりやすい例ではしょんぼりしていると垂れ下がり、気合いが入るとピンと立つ。
 丸っきりクールな顔をしていても耳がぴくぴく動いていたりするなどといった使い方は、素晴らしい萌え的破壊力がある。
 このように長い耳になることでエルフの耳は悪魔や吸血鬼などの異界の住人を示す記号から、猫耳を代表とするケモミミの一種となったわけだ。

 勿論、単純にシルエットとして分かりやすくなったという点でも、ディードの長耳は重要な転換点だと言える。
 近年のエルフの耳は上へ向いておらず、水平方向へ突き出ていることが多い。これは克己心のあるエルフという種族が犬的な種族に変化していると言えそうだ。憧れの存在から愛玩動物への変化と言える。このままいけばエルフの耳は垂れ耳が主流になりそうだ。

白い肌

 エルフの肌は白く、男女ともに体毛は薄く殆どないとされる。つまり…脇毛や陰毛もうっすら。
 なんとゆーか、オタクが好きな方好きな方へと設定が作られています。

ロングストレートの金髪

 エルフは自然のままであることを好む種族なので、当然髪は伸ばしっぱなしになる。
 髪を切ることは勿論、三つ編み程度の加工も例外的なので、必然的にストレートロングヘアとなる。
 多くの妖精(フェアリー)のイメージと同じく金髪。
 オタクはとにかくナチュラルを好む傾向にあるので、エルフとの親和性は高い。
 なお、ケルト神話のダナン神族(トゥアハ・デ・ダナーン)の金髪碧眼のイメージがエルフに流れ込んでいる可能性もある。

切れ長のアーモンドアイ

 米国では東洋人っぽいキツネ目が定番だが、日本では切れ長程度に落ち着いた。
 目の形は猫のような上下が湾曲したアーモンドアイで、虹彩は碧眼か翠眼。
 瞳孔も縦長のアーモンド状の場合もあるが、日本では蛇のようで嫌われる傾向が強いのであまり見ない。
 ただし、萌えキャラの目はあまりバリエーションがなく、エルフもあまりこのイメージに忠実ではない。

緑のミニスカート

 服は緑系でミニスカート着用。上着も肩が出ているものが多く、概ね露出度は高め。
 鎧を着ていても、ブレストプレートと肩当て程度の軽装。たぶん常に裸でいたい位なのだろう。
 緑系なのは森で生活している上に、他種族と関わることを良しとしない性格であることから迷彩の一種と思われる。
 樹上生活者なのでロングスカートは有り得ない。かといってズボンとなるとちと現代的な色が強くなるのでミニスカートはある意味必然。ついでにミニスカートは自然=生足というアホな発想もあるんじゃないかとも思う。

 ちなみに自然大好きエルフの世界でパンツ自体発明されているかどうか怪しく、パンツ履いてない可能性が高い。

マント

 マント着用率は高いが、これは徒歩で旅をするキャラ全体にいえる。実際マントの有る無しは野宿での生き死にを左右する超重要アイテムなので当然ではある。
 とはいえ、TRPG系から広まったエルフに、マントが定番というのは間違いないだろう。

白い薄衣

 もう一方の服のとして白い薄衣(ワンピース)を纏った姿がある。こちらは森ではなく草原のエルフと考えると自然かと思う。より妖精的イメージだ。

装飾品好き

 自然を加工することが嫌いなエルフだが装飾品は大好きで、サークレットをはじめ、様々な装身具を身につけている。ただ、体は自然なのが好きなのかピアスなどをつけている印象はない。
 勿論、それらの金属加工は基本的に自分たちで行うのだが、金属加工技術に於いてのみはエルフはドワーフの技術および芸術性の高さを認めている、といのが定番の設定。
「ま…まぁ、そこだけは認めてやるわ…だからってあんたたちが好きな訳じゃないからねっ!」
 どう考えてもツンデレです。種族全体でツンデレ!すげー、エルフすげー。

内面属性

高貴かつ高慢な性格

 他種族を嫌う排他的な傾向があり、特にドワーフとは犬猿の仲。
 頭脳・容姿・丈夫さ・感覚・寿命・芸術センスなど繁殖力以外あらゆる面で優れているエルフは、人間を数段低く見るところがある。例えば、裸を見られたところで、人間が猿に裸を見られても照れないのと同様に気にしない。
 この行動傾向は姫(貴族)と同様であり、姫好きはかなりの率でエルフ好きだと思う。
 人間の男に顔を赤らめるディードリットは、エルフの常識からすると猿好きの変態である。

特殊能力

 華奢なイメージだが、もの凄い毒に強かったりするので侮れない。だてに長命ではないということだ。
 大きく長い耳に見合う聴力を持っていて、視力もかなりよく赤外線領域を見る(インフラビジョン)こともできる。
 動物や植物、精霊・妖精の類いとも意思疎通ができる。そのためそれらの力を借りることもままある。
 超能力者は代表的な萌え要素のひとつだ。

希少種

 長命とはいえ、繁殖力が極めて低い種族なので、その数は少ない。
 この設定は存在した時点でもう特別感があり、受け手に大事なものであるという印象を植え付ける。
 有り体に言おう「オタクはレアものに弱いのだ!」

長命

 エルフは長命であるので、一見少女、あるいは幼女のように見えても年齢は軽く人間の一生分を越えている、なんてこともある。
 コナン的に言えば見た目は幼女・頭脳は大人。ロリババァとも呼ばれる複合的な要素だ。

 また長命は、人間とのペアの場合の切なさを高める、物語的な萌え要素と言える。

職業

魔法(精霊)使い

 エルフは、マジックハットと杖とローブで身を固め、巻物や薬で術を使うイメージの(理系的)魔法使いとは別の、妖精や精霊と親しく、その力を借りて魔法を使うイメージを持つ種族だ。
 訓練や学習で魔法が使えるというより、持って産まれた超能力としての魔法と言ってもいい。

戦士

 エルフは魔法使いとともに戦士のイメージも割と強い。
 その際の持物は長弓(ロングボウ)か細剣(レイピア)が定番。

亜種

 エルフは人気があるため、亜種が多い。その中で割と代表的なものを取り上げる。

ハイエルフ

 エルフの中のエルフとでもいうべき、純血種のエルフ。
 わりといい加減な設定で使われることも多いが、要するにエルフの特別感をさらに高めた種族だ。

ハーフエルフ

 ハーフエルフとはエルフと人間の血を半分ずつ受け継いでいる種族だ。
 つまりエルフは、人間でも孕ませることができるということだ。
 この、人間以外のものだが人間と近いという絶妙な人外感がエルフの魅力のひとつであるのは間違いないだろう。

ダークエルフ

 エルフ亜種の中で特に人気があるのはダークエルフで、細身で美しく長命などというエルフの基本設定は引き継ぎつつエルフの逆を行くような設定の種族だ。
 肌の色は黒く、髪は銀髪、胸は大きく、人と交わるのを悪しとせず、自然を大切にすることもない。
 かなりダークエルフのイメージには揺らぎがあるのだが、褐色から黒の肌はほぼ共通していて、大抵はエルフと敵対している悪役。

まとめ

 このようにエルフは、萌える要素を総動員して作られたかのような種族といえる。
 そして、主流が貧乳から巨乳に移行したように、これからも萌えのトレンドとともにそのイメージを少しずつ変えながら愛され続けるのだろう。