アーマー
柔らかく繊細な女性の体に、硬く無骨な金属鎧を組み合わせることで、よりいっそう女性性が引き立つ定番デザイン。
また戦士であるのだから、当然戦う。これも女性とは強い対比を見せる要素である。
萌えのほとんどは、ギャップによって引き起こされる。甲冑少女はそのような萌えの典型である。そして、女体というベースとの対比によって産まれる萌えであるため、他の要素との組み合わせを必要としない強力な萌え要素でもある。
甲冑を着ているのに、むしろ普通の服より露出が高いことが多いが、これは彼女らの美しい肢体が今にも切られて血にまみれてしまうとうい想像を容易に喚起する。
そのドキドキが萌えのドキドキに転化されるという、「吊り橋効果」に似た効果も考えられる。
ビキニアーマー
アマゾネス系はアーマーの概念がない蛮人のイメージでしっかり筋肉もついている。映画「コナン・ザ・グレート」バレリア1982が代表的で、米国ではペーパーバック小説時代から人気がある。しかし日本ではあまりウケが良くない。ただし、その露出の高い衣装と剣を振り回す女性というイメージは受け入れられた。
日本でこのイメージを受け継いだのは漫画「コブラ」1977だ。意外に作中にビキニアーマーが登場するのは遅いが。ビキニ衣装は初期から出ている。露出が高く魅力的な女性たちは、直接間接に萌えに大きな影響を与えた。
日本では米国からのファンタジーヒロインの流入とともに、特撮ヒーローの敵が女戦士の系譜となっている。「仮面ライダー」蜂女1971の全身タイツは衝撃だった。
そして怖いが美しい女から萌えの方向へ「科学戦隊ダイナマン」王女キメラ1983が大きく舵を切り、同人誌でも人気のキャラクタとなった。
そしてビキニアーマーが、ブレイクしたのはOVA「幻夢戦記レダ」朝霧陽子1985だろう。
これがさらに一般化するのは、大ヒットRPG「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」女戦士1988。
そのまったく防御の役に立っていない格好は、戦士というより剣の舞を披露する踊り子のイメージがある。「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」マーニャ1990が代表的。おそらくこのイメージは「餓狼伝説2」不知火舞1992に連なっている。
80年代は、ビキニアーマー全盛期といっても過言ではない。
しかし、荒唐無稽に過ぎることが嫌われたのか、「ロードス島戦記」エルフの魔法戦士ディードリット1986の人気もあり、ある程度のリアルさが求められるようになり、90年代にはほとんどいなくなる。
ファンタジー世界でのビキニは、魔法使いの方へシフトしていたが、「クイーンズブレイド」2006によってビキニアーマーは復活している。この「クイーンズブレイド」のゲーム部分に「ロストワールド」1985が採用されていることが、一度ビジュアルとゲームの二つに分かれたファンタジーの系譜が融合したようで何とも感慨深い。
レオタードアーマーなど
体はレオタードに包まれていて鎧がほとんどないが、腕や足には鎧があるデザイン。
役割としては「ボディラインがくっきり出る鎧」なので、ビキニアーマーに分類しても問題ないのだが、実際の話ビキニではないので分けた。
ボンデージアーマーも含めた、包括的な用語がほしいところである。
「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」女勇者1988、「闘神伝」ソフィア1995、「ソウルキャリバー」タキ、アイヴィー1998。
ガントレット
他の部分は比較的軽装なのに、ガントレット(篭手)の部分だけは、ごついプレートメイルのもの。
部分的な鎧は機械と肉体の融合したサイボーグ的イメージを想起させる。「ナウシカ」クシャナ1982などは正に義手であったわけで、宮崎作品のもつフェティッシュさを代表するキャラだ。
この萌え要素はほぼ間違いなく、少女騎士ジャンヌダルクをイメージソースとしている。
「ワールドヒーローズ」ジャンヌ1992、「サムライスピリッツ」シャルロット1993、「プリンセスクラウン」グラドリエル1997、「ヴァルキリープロファイル」レナス1999、「Fate/stay night」セイバー2004と、常に地味ながら人気のあるキャラクタが存在する。
萌えデザインのパターンの一つに、末端肥大パターンがある。手足、頭が大きいと可愛く見えるとういものだ。単純なシルエットとしては、ミトンや獣手萌えと同じものと言える。
そして、手にごつい装備をすることにより、大きな武器を振り回すビジュアル的な説明となっている。現実には手が重くなって、より振り回しにくくなるだけだが、絵的にはあたかもガントレットによって力が強くなっているようなイメージを与える。
特に、小柄な少女が巨大なアックスを振り回すという定番を可能としているのは、この絵的意識操作の賜物だと言えるだろう。代表的なのは「テイルズオブシンフォニア」プレセア2003
ちなみに、フルアーマーの少女の場合は、着ぐるみ少女に近い萌えとなる。
「うる星やつら」水乃小路 飛鳥が代表。
レザーアーマー
一番数は多いが、それだけにインパクトがない。ただし、数が多いだけに超有名キャラもいる。
特に戦う少女が大量に出るSRPGを取り上げると、枚挙に暇がない。
「ワルキューレの伝説(冒険)」ワルキューレ1986はギャルズアイランドでチュンリーと列ぶ人気を長期にわたって維持した。
「ロードス島戦記」ディードリットは、日本でのエルフのイメージを決定づけた。